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ごちうさ最新話の見どころまとめ(まんがタイムきららMAX2022年7月号)
「ご注文はうさぎですか?」(以下、ごちうさ)にはたくさんの魅力がありますが、いざ人に説明しようとすると、何から話せばいいか迷いますよね。
キャラクターの成長?ストーリーの伏線?自分の中では素晴らしいものだと分かっているつもりでも、それを言葉にしようとすると、案外難しいものです。
まんがタイムきららMAXの最新話を読むたびに、この作品の奥の深さを実感する自分がいます。何も考えずにごちうさを読むのも楽しみ方の一つですが、せっかくならこの魅力を人に伝えられるようになりたいですよね?
この記事は、そんなファンのために、毎月更新されるごちうさの新たな魅力を紐解くことで、その見どころとなるポイントを整理し、まとめていくものとなっています。
さて、今月もごちうさの最新話が公開されました。
今月のきららMAX掲載『ご注文はうさぎですか?』は、
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) May 18, 2022
フユ&エル&ナツメのブラバ組で、ブロカント(古物市)にお店を出すことに…。
いろんな売り物を持ってきましたが、さて、完売となるか…?? #gochiusa pic.twitter.com/uVeX6VVcN8
お話に関わる重要なシーンをピックアップしていきますので、よろしければ最後までお付き合い下さい。
注意:本記事は、まんがタイムきららMAX2022年7月号掲載のごちうさに関するネタバレを含みます。
■ 船乗り衣装のブライトバニー三姉妹が可愛い!
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木組みの街はいよいよこれから夏本番といったところ。現実の世界に夏が来るのはもう少し先のことですが、やけに寒かった四月が終わり、ようやく半袖でも安心して外に出られる日が増えてきました。
そんな中、今月の扉絵は元気いっぱいのブラバ三姉妹!
三人とも表情や仕草がひたすらに可愛くて癒されます。特に、エルちゃんのキス顔はストレートに心がときめきますね。
エルちゃんは割とあざとい仕草をしてみせることが多いですが、人柄のなせる業なのか、嫌味を全く感じさせないのが凄い。
白を基調とした船乗り衣装も、眩しいくらいに可愛いですね。
この衣装なんですが、ブラバ組三人の「船出」を象徴しているらしいです。
今月号の扉絵では神沙姉妹、風衣葉冬優の3人が描かれました。ブラバ組3人の「船出」を象徴するような扉絵であると思います。
— あるごん@固定ツイ読んでほしい (@ArgonEvangelion) May 20, 2022
本ツイートでは、神沙映月ちゃんを引き立たせるものが如何なるものであるのかについての僕の考察を代替テキストにまとめました。ぜひ御一読ください。#gochiusa pic.twitter.com/GnlNriy9Yd
確かに、フユちゃんと神沙姉妹が三人だけで何かをするのって、これが初めてですね。
今回のお話はブラバ三姉妹がブロカントに出店する内容となっていて、ココアちゃんたちは基本的にはお客さんであり、サポート役でした。
ブラバ三姉妹が主役のエピソードは他にもありそうなものですが、これが意外と無いんですよね。そもそも、三人が作中で揃ったのはラビットハウスでお泊り会をしたのが最後でした。
この時はまだフユちゃんと神沙姉妹がようやく打ち解けたところで、今のような気心の知れた仲ではなかったと思います。
三人の仲がまた一段階縮まったという意味で、今回のお話は「新たな船出」と言えるでしょう。扉絵には、Koi先生の祝福の気持ちが込められているのかもしれません。
■ 寄ってらっしゃい、見てらっしゃい!ブラバ組出品の面白グッズ
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さて今回のお話は、ブラバ三姉妹がブロカントに出店します。
ブロカントは、フランスのパリで実際に行われている古物市です。語源を辿ると「美しいガラクタ」という意味のフランス語で、物を長く大切にする西洋思想に基づいた文化ですね。
ブロカントの歴史は非常に長く、その起源は100年以上前。1885年に発足したクリニャンクールの蚤の市にまでさかのぼると言われています。
過去には、ココアちゃんたちもブロカントに出店したことがありました。BLOOM1巻のディスクガイドには、ブロカントの詳しい解説が写真付きで掲載されているので、興味があったら読んでみてください。
「Brocante」は「美しいガラクタ」という語源を持つフランス語。フランスでは「物を大切にして長く使い続ける」という文化が根付いていて、ブロカントを出品する蚤の市(フリーマーケット)が大規模に行われています。使い古されて味が出ている美しい物品もあれば、何に使えばいいのかわからないガラクタも出品されているのが特徴。良い物を選りすぐったブロカントの専門店もあるのです。
玉石混交のブロカントらしく、フユちゃんたちが持ち寄った中古品も、非常に個性的で面白かったです。
まずは、三人がそれぞれどんな品を持ち寄ったのか見てみましょう。
・早くも登場!ごちハピフユちゃんの「堕天」Tシャツ
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ごちハピで生まれたあのTシャツがとうとう原作に登場しましたね!
毎年4月1日に行われる、ごちうさのエイプリルフール企画。今年のネタは「幸せの青い鳥」で、ココアちゃんたちは孵化したばかりの雛鳥の姿に化けていました。
フユちゃんの背中には黒い羽があり、おそらくテーマはカラスの雛鳥であることが想像できます。ここまでは良いんですが、フユちゃんのTシャツに「The 堕天」という謎の文字が大きく貼り付けられていたことで、ファンの間に衝撃が走りました。
引っ込み思案なフユちゃんの性格とは似ても似つかないこの派手なTシャツは、記憶に鮮明に刻まれた方も多いと思います。
エイプリルフールネタの多くは原作にも採用されているので、今年のネタもいずれは本編に登場するだろうという読みはありましたが、まさかこんなに早いタイミングで登場するとは思いませんでした。登場したのはあくまで一部、フユちゃんのTシャツだけなので、本格的にごちハピが来るのはもう少し先になると思いますが、この調子だと来月に来てもおかしくはないですね。
・なんでエルちゃんが拘束具を!?
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サプライズといえば、エルちゃんがブロカントに拘束具を持ってきたのもびっくりでした。
現代ではSMプレイの女王様くらいにしか需要がなさそうな、鎖のついた黒い拘束具。一見すると首輪にも見えるそれは、もちろん本物ではありません。パーティ会場などで使用することを目的とした、いわばジョークグッズです。
ジョークとはいえ、これを実際に身に付けている人がいたら、周りはドン引きすること請け合いでしょう。実際、神沙姉妹がこのSMグッズを買ったのも、本来の用途ではなく、「人を避けるため」という目的がありました。
明るい神沙姉妹がどうして人を避けていたのかは後で語るとして、グッズは他にもあります。チョーカーやアイマスクだけでなく、鞭を巻いたような紐の束まであり、本当にSMプレイの女王様なりきりセット、という感じです。
極めつけは、本のタイトル。これは外面モードのエルちゃんが度々目を通している「あのシリーズ」の一つでしょう。「やべぇ心理術」に続き、まさか「心まで飼う」なんて本まで出版されていたとは思いませんでした。一体どれだけあるんだ、このシリーズ。
こうして見ると、神沙姉妹が過去にどれだけ迷走していたかがよく分かって面白いです。ナツメちゃんはともかく、裏モードのエルちゃんはなまじ優秀な人材であるだけに、ドS化したら怖いですね。
・かつてナツメちゃんは髪を伸ばしていた?フォトフレームの気になる写真
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今回、神沙姉妹の過去で新たに分かったのは、ナツメちゃんのこと。
ナツメちゃんは、かつてエルちゃんと同じように髪を長く伸ばしていたことがフォトフレームの写真で分かりました。
ナツメちゃんといえば性格的にはマヤちゃんに近い部分があります。勝ち気で男勝りなところはマヤちゃんと馬が合うのか合わないのか、顔を合わせると口論になることもしばしば。
初登場時からずっとショートヘアーを貫いていることもあり、ナツメちゃんはてっきりそういう動きやすい髪型の方が好きなんだと思っていました。
事実、今の髪型が気に入っているのは確かでしょう。ただ、以前の長い髪に全く未練がないかと言われれば、それは少し違うんじゃないかという気がしないでもないです。
エルちゃん曰く、髪を切ったのは姉妹の区別をつけるためで、その理由はナツメちゃん自身の本心を反映したものではないからです。
ナツメちゃんもボーイッシュながら乙女らしい一面があるので、エルちゃんと同じように髪を伸ばしたい気持ちはあるのではないでしょうか。
ウィッグを被った神沙姉妹が入れ替わるネタとか面白そうですね。過去にはリゼちゃんが変装でココチノにドッキリを仕掛けたことがあるくらいですし。
■ ブロカントで知るお互いのこと。神沙姉妹の過去と、フユちゃんの「人を見る目」
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さて今回のメインテーマとも言うべき、フユちゃんとナツエルの関係に迫ります。ブラバ三姉妹がブロカントに出店したのには、目的がありました。
地元住民がたくさん集まるブロカントという場を通して、自分たちの接客技術をレベルアップさせよう、というもの。
接客に少々課題を抱える三人らしい取り組みですね。発案したのが誰なのかまでは詳しく語られていませんが、最初のページに「フユさんの地道な努力、恐るべし……!」とあるので、提案したのはフユちゃんかもしれません。
さすが聡明なフユちゃんというか、これって結構、良いアイデアです。というのも、すでにブラバ店員として働いているフユちゃんはともかく、神沙姉妹はまだ面接に挑戦中の身。
二人が実際にお客さんとやりとりできる機会は、少ないはずです。その点、ブロカントでは貴重な接客経験を積めますから、二人にとっては大きなチャンスでしょう。
また、これは想像ですが、ブロカントに来るのはおそらく地元住民だけではないです。世界的に有名なパリの三大蚤の市(ヴァンヴ、クリニャンクール、モントルイユ)には、国内だけでなく、国外からも非常に多くの来訪者が集まります。
観光客からバイヤーまで、その客層は様々です。木組みの街のブロカントが、現実のそれと全く一緒というわけではないにしても、街の外からやってくる人は少なくない気がします。
そういうわけで、これ以上ないほど良い環境に恵まれたブラバ組。交流の成果も、期待以上の結果を得ることができました。
ブラバ組の露店は、途中から雪崩のようにお客さんが押し寄せます。昔の三人が相手をしていたら混乱して終わっていたでしょう。が、そこは今日まで成長を繰り返してきたブラバ組。適材適所をコンセプトにしたフユちゃん主導の巧みな戦略で、お客さんを惹き付けます。
忙しい時間をチームワークで乗り越えてみせた経験は、ブラバでもきっと役に立つはずです。
何より、この経験を通して、三人はお互いのことをもっとよく知ることができました。
具体的に誰のどんな部分を、三人は新しく知ったのか。本項では、この点について、フユちゃんの視点、神沙姉妹の視点それぞれから見ていきます。
・神沙姉妹が人を避けていた理由
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フユちゃんは今回、神沙姉妹の過去を二つ知りました。
一つは、ナツメちゃんが髪を切ったこと。この理由は明白で、姉妹の区別が周囲の人にもできるようにするためです。
ナツメちゃん自身にどんな心理的葛藤があったかは置いておくとして、ナツメちゃんは今の自分に満足しているように見えます。であれば、「後悔はないよ」という、彼女がフユちゃんに向けた言葉も、ある程度は事実なのでしょう。
一方、神沙姉妹にはもう一つの過去があります。人を避けていた時期があること。
フユちゃんが神沙姉妹にこの理由をあえて聞かなかったのは、ひょっとしたらフユちゃんなりの気遣いだったのかもしれません。実際、神沙姉妹は当時の自分たちのことを、「グレていた」と言っています。
人間、誰しも黒歴史の一つや二つあるものです。確かに、人を避ける理由として、「グレていた」は一定の理屈が通っているように見えます。
しかし、神沙姉妹は本当にそれだけで人を避けていたのでしょうか?
これを知るには今月号の話だけでは不十分なので、過去の話をさかのぼってみましょう。原作9巻第12話「世界のすべてを経験値にしてあげる」は、マヤメグが神沙姉妹のポーカーフェイスを暴くお話でした。
この話の中で、エルちゃんは自身が転校を多く経験してきたことをマヤちゃんに明かしながら、こう言っています。「仲良くしすぎると離れた時辛い」。
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また、原作10巻2話は、神沙姉妹がこれまで抱えてきた深い孤独を象徴するような一コマから始まります。「私たちの世界は二人きり」「転校が多くて、近づいてくる子も私達より家柄を見てた」。
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つまり、神沙姉妹は自分から人を避けていたわけではなく、傷つくことから逃げるための自衛手段の一つとして、人を避けざるを得なかったのではないでしょうか。
大企業の社長令嬢という、大きな看板を背負った二人は、そもそも周囲になじむ事自体がものすごく大変だったはずです。本人たちの言うように、家柄目当てで近づく人もいれば、逆に畏れ多くて迂闊に近寄れない人もいたでしょう。
かつてのフユちゃんは、まさにその「迂闊に近寄れない」タイプの人でした。自分たちの存在が他の人よりも異質であることは、神沙姉妹もよく理解していたと思います。
そうした中で友達を作るのは、並大抵のことではありません。きっと二人は、様々な努力を重ねてきたことでしょう。やっとの思いで友達を作っても、転校したら、離れ離れ。また一から人間関係をやり直さなければならなくなります。作っては崩されるトランプタワーのような生活が続くわけですから、そりゃ誰だって心が折れますよ。
神沙姉妹の闇グッズは、そうした辛い現実から二人が自らの心を守るための、いわばシェルターだったのだと思います。
・引っ込み思案の少女の目には誰かの個性がよく映る
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一方、神沙姉妹はフユちゃんのどんなことを知ったのか。これは、ナツメちゃんの言葉が示すように、フユちゃんが神沙姉妹の個性をよく見ていることですね。
きっかけは、フユちゃんが今回提案した「チームワーク作戦」にありました。多数のお客さんに対応するためにフユちゃんが考え付いたのは、役割をそれぞれの個性に合わせて分担しよう、というもの。
ナツメちゃんは商品の実演、エルちゃんは場のムードメーカー。適材適所の考えに基づいた役割の指示は、お見事でした。
フユちゃん自身は全く自覚がなかったかもしれませんが、これって神沙姉妹の人柄を知っていなければ立てられない作戦です。僕自身、ナツメちゃんの言葉で初めて気づいたのですが、言われてみれば確かに、フユちゃんって人をよく見てますよね。
過去の話をさかのぼれば、原作10巻8話では、千夜ちゃんのことを「朗らかで接客に自信がある」と褒めています。
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10巻全体を通して見れば、落ち込んだチノちゃんに助け船を出すシーンが何度かあることも分かるでしょう。人柄だけでなく、心の変化にも、フユちゃんは人一倍敏感です。
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どうしてフユちゃんは人を見抜けるのでしょうか。これは、フユちゃんが内気であることと無関係ではないと思うんです。
先ほどの神沙姉妹の過去とも連動する話なのですが、フユちゃんもまた、傷つくことを人よりも恐れる性格です。物陰に隠れる習慣があるのは、そうした性格の表れで、自身の欠点を直そうとするのも、傷つかないための対策でしょう。
この点、フユちゃんと神沙姉妹は、本質的に似ているのかもしれません。傷つくことを避けるための方法は基本的に二つしかなく、人との関係を遮断するか、人に迷惑をかけないよう生きるか、です。
神沙姉妹は前者を選び、フユちゃんは後者の道を選んだ。だとしたら、フユちゃんの半生とはつまり、「人に迷惑をかけないように生きてきた」歴史とも言えます。
人に迷惑をかけないために必要なのは、人の顔色を見ることです。そうした過去が、フユちゃんの観察力を養ってきたのではないでしょうか。
もちろん、これは推測であって、現時点で確実にそうだと断言できるものではありません。ただ、仮にネガティブな過去で得た力だったとしても、ちゃんと誰かの幸せになることがあるんだっていうのは、良いメッセージですよね。
そういえばメグちゃんも、人目が恥ずかしくてバレエを辞めた経験がありました。「人を見る目」は、メグちゃんにもあります。原作7巻のスケート回は、それを最もわかりやすく反映したエピソードと言えるでしょう。自分自身すら気付いていなかったココアちゃんの良いところを、メグちゃんはしっかり見抜いていましたね。
そしてココアちゃんは、最後にメグちゃんへ、こんな言葉をかけています。「私たちのいい所を見つけてくれるのが上手いんだね」「メグちゃんにはそれだけたくさんの事が見えてるんだよ」
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引っ込み思案の少女の目には、誰かの個性がよく映る。これは、ごちうさの根底を流れる一つのテーマなんじゃないかと思います。
■「暖かさと夜明けを運ぶ」ココアさん
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最後になりますが、今回ブラバ組の大繁盛を引き起こした張本人ことココアちゃんについて語っておきます。
といっても難しいことはなくて、今回のココアちゃんは非常に「らしい」なと。
らしい、というのはチノちゃんが以前、ある言葉を残しているからです。原作9巻のイースター回、「暖かさと夜明けを運べる人」は、ココアちゃんの人柄だけでなく、周りにとってのココアちゃんが一体どういう存在であるかを示した、作中でも非常に貴重な一言です。
今回のココアちゃんは、まさにその言葉通りのことをしていました。ココアちゃんがもしいなかったら、ブラバ組の出店は繁盛せず、三人がお互いを知る機会も、きっと無かったことでしょう。
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大事なキーワードなので、これは定期的に思い出しておきたいですね。
■ おわりに
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さて今回は、ブラバ組の初ブロカントが強く印象に残ったお話でした。いかがでしたか?
ここでご紹介したものは、あくまで個人の解釈です。本記事を手がかりに、みなさんも自分なりの考えや解釈を広げてみてください。
またね!