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カンバセイション・イン・スペース

気がつくと、やわらかなひかりの粒子がきらめく平原にいた。
そこが地上でないことはすぐに分かった。
上にも右にも左にも下にも、無数の星が光っているから。


すぐに分かったわ。
だってこれは私が5年前に初めて書いた長編小説と同じ場所。行ったことはない、でも知っていたの。
ここであなたにまた逢えることも。
あなたが生きていようがいまいが、ヒトであろうがなかろうが、お互いもうわかっていて、愛し合っていることもね。


あなたは私の歌を覚えてしまった。
だから私が地上にいてあなたを思えば、鳥となって頭上に現れる。星の姿を取ることも。


私はあなたが今いる地平の上空。この明け方にいたわ。
あなたに逢いに。見ていたの。


あなたが乗り物に乗る時私はそれになり、私がぼんやりとしてふと口ずさむ歌にあなたはなる。
月のひかりとなって私を癒し、私は炉火の炎になる。あたためてあげる。美味しいものを作ってあげる。
あなたは風となって私の想いを運び去る。
私は水としてあなたを清め潤す。


私は虹になってあなたへ流れていく。
ここで昔から私たち、そう決めていたんだものね。

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