3年住んだアパートを引っ越すことにした
初めての独り暮らしを始めて3年程経つ。
今回、5月末を持って引っ越すことにした。
今の物件は良い点・悪い点両方あり、かなり悩んだが決断した。
なんせ一人で住むのが初めてのため比較対象がなく、周りで起こるたいていの事は「まぁこんなもんかあ」と納得してしまっていたが、友人に聞くと「クセが強すぎる」「令和の日本とは思えない」「そもそも日本なのか」と突っ込みの嵐であり、異常であることに気がついてきた。
せっかくなので、これまで指摘されたポイントを解説していきたい。
・入居条件
荒川近くにあるこの物件は、フラっと入った不動産屋の店長が個人的に大家と顔見知りとのことで紹介された。
入居条件は下記の通り。
・日本人限定
・男性限定
・20代限定
・東大生及びそのOB限定
そう、東大生限定なのである。
当然、自分は東大なんて卒業していない。
いま思えば何で紹介されたのか不思議だが、物件自体は自分の希望を概ね満たしていたため、その日中に内検へ行った。
現地に行くと店長が大家に鍵を借りに行くとの事。
どうやらアパートのすぐ隣に大家の家があるらしい。
家の前で待っていると80歳くらいのおじいちゃんが孫の手と鍵を持って出てきた。
そして、そのまま内検まで着いてきた。
「え、来るの?」と驚いている店長と僕を尻目に部屋に入っていった大家は、そのまま持っていた孫の手でブレーカーを上げ、電気をつけ始めた。
↓内検後、お土産にもらった孫の手
↓高所のブレーカーもこの通りラクラクつけられる
大家につられて入ってみると、中はリフォームしてあり築30年の割には綺麗だった。
天井も高く、開放感があって悪くない。しかも1階のためベランダが広い。
室内のチェックが終わった後、僕は最大の懸念点をぶつけた。
僕「東大卒じゃないんですけど住めますか」
大家「東大生ならモラルあると思って指定しているだけだから要相談だよ」
僕「XX大学卒業しました。単位は一つも落としてません。厳格な両親の元、マナーには人一倍気を使えと言われ育ってきました」
大家「・・・」
僕「母校は駅伝にもでてます」
大家「採用」
結局、採用基準は大家が知っている大学かどうかだった。
こうして2018年3月、日本一偏差値が高いアパートへの入居が決まった。
ちなみにこのあと大家と意気投合した僕は、特別にウォシュレットを取り付けてもらう事になった。
・家賃の支払い
どうやら家賃の支払いは口座引落しが普通らしい。
が、このアパートは手渡しである。
月末になると封筒に入れた1か月分の家賃と台帳を持って隣にある大家宅のチャイムを鳴らす。
家賃の確認後に台帳へハンコを押してもらう流れだが、この際に世間話イベントが発生する。
3回に1回は戦後の闇市で布を安く仕入れ北海道で売りさばいて財を成した話をされるが、毎回初耳のごときリアクションをするのが通例だ。
ちなみに話が終わった後は毎回お菓子をくれる。
まるで献血に行ったみたいだ。
ここまで読んでお察しの通り、当アパートでは大家との距離感が近い。
管理会社などは契約せず大家が共用部の掃除なども行うため、普段の遭遇率も高い。
幸い自分はそういった関係性が特に苦でもなかったため、次第に仲良くなっていった。
それにより、エアコンを自分の部屋だけ最新のものに取り換えてもらったり、キャンプ道具を乾かすため特別に屋上を開放してもらうなど、様々な恩恵を受けた。
もし今の賃貸が大家と会える環境であれば、仲良くしておくのがおすすめである。
・アパートの外観
この物件、友達からは「アウシュビッツ」「刑務所」など散々な呼ばれ方をしている。
理由は単純で見た目がボロいからである。
外壁は一部ヒビが入っており、アパートを囲む塀の上には有刺鉄線が巻かれている。
その他諸々、歴史を感じる部分が多数ある。
↓塀を取り巻く有刺鉄線
↓かつてガスを使った何かが行われていた跡
・アパートの立地
内検時には気が付かなかったが、アパートの裏手には小さな町工場があった。自分の部屋は角部屋であり、ちょうど接している部分である。
この町工場、毎朝7時ごろから稼働し始めるのだが、フォークリフトがバックする音がめちゃくちゃ聞こえる。
今では馴れたが、最初のころは「ピコーンピコーン」という音でよく目が覚めた。
また館内放送が頻繁にあるのだが、工藤さん7番にお電話ですという放送が大半を占めている。
工藤さんに携帯電話を持たせてくれと何度頼もうと思ったか分からない。
・壁の薄さ
RC鉄骨と聞いて油断していたが、実際は他の部屋の音が丸聞こえである。
アパートの外壁はそれなりに頑強な作りになっているが、部屋同士を隔てる壁は段ボールや発泡スチロールに比類する薄さだ。
その薄さが故に隣人との騒音トラブルが起きそうなものだが、逆に仲良くなることに成功した。
詳しくは別のnoteで書いてるので壁が薄い物件に住んでる人は参考にしてみて欲しい↓
また、1階のため上層階の音も聞こえる。
水回りの音が最も響き、排水すると壁の中を伝うパイプを流れる水音が室内に響く。
もっと言うと、蛇口を締める際の「キュッッ」という音も聞こえる。
友人からは「まるで潜水艦の中みたいだ」とよく言われる。
住めば都とはよく言ったもので、こうした生活音は慣れてしまった。
ただし、一点どうしても許せないのが扉の開閉である。
どうやら2~3階の住人の中にやんちゃな東大生がいるらしく、たまに玄関の扉を力いっぱい閉める。
すると、昭和から生き続けてきたこのアパートは衝撃で揺れるのである。
更に「ドゴォォォァァアアン」と音も凄まじく、最初はまじでガス爆発か何かかと思った。
・電波
一応これでも23区内なのだが、部屋の中が圏外である。
正確には窓際に行けばアンテナが2本立つものの、空間の8割が圏外だ。
恐らく周囲が建物に囲まれているため物理的に電波が届きにくい構造なのかもしれない。
そのためWi-Fi必須となっている。
最初の頃は窓際に銀のボウルを置き、その中にポケットWi-Fiを置く事で外から電波を反射させることで少しでも感度を上げようとしていたが、焼け石に水だったので最終的に光回線を設置した。
・周辺の環境
動物が沢山いる。
正確にはネコが沢山いる。
どうやら地域ぐるみで面倒を見ているらしく、道にエサが置いてある風景をよく目にする。
道を歩くと結構な頻度で遭遇し、ネコ側も警戒心がないため近くまで寄っても大丈夫だ。
在宅勤務の癒しになっており、特に用事がなくても周辺を散歩してしまう。
↓尾黒(おぐろ)さんと勝手に呼んでいる地域ネコ。頻繁に会う。
↓公園に放置された椅子でくつろぐ尾黒さん
ある日、いつものように尾黒さんを探して散歩していた時、あり得ない動物と出会った。
リクガメである。
最初は人形かと思ったが、どう見ても歩いているしフシューフシューと息も荒い。
警察へ通報しかけたが、後ろから飼い主が来て散歩中だと説明してくれた。
ちなみに方向転換の時には甲羅を足で蹴って軌道を変えるらしい。
それ以来、散歩の楽しみが増えた。
・外国人
アパートの周りには東南アジア系の人が多く住んでいる。
最近は減ったが一時期は朝になると、どこからともなくイスラム教関連の放送音が流れて異国情緒を感じた。
また、近所の商店街にはベトナム人?が経営する八百屋があるのだが、野菜が異常に安い。
じゃがいも、ニンジン、ピーマン×2、半キャベツがセットで100円という価格破壊っぷりであり、しかも何を買ってもパプリカ一つサービスである。
パプリカを買ってもサービスしてくれるため、一時期冷蔵庫の半分がパプリカで埋まっていた。
不況なのか、最近はレモンに置き換わってしまったのが残念である。
ちなみに店内は常にユーロビートが爆音で流れており、下町風情溢れる商店街の中で明らかに浮いている。
・まとめ
改めて振り返ると、住んでてもあまり良かった点がないかもしれない
じゃあなぜ3年も居たのかと言われると、なんかこう、上手く説明できない魅力があったのだ。
完全オール電化のタワマンに住むよりも、こうした不自由を楽しむ生活の方が性に合っていたのかもしれない。
少なくともマイナスな環境でいかに楽しむかを考える力は身に着いた。。。と思う。
最初から最高を体験すると後は下がっていくだけなので、まずは底辺から始めて段階的にQOL(quality of life:生活の質)を上げていけば、今後はひたすらハッピーだ。まさに右肩上がり。
そろそろQOLを上げようと思い立ち新居探しを進めていたのだが、昨日引っ越し日が決まったので今回noteにまとめてみた。
これを読んで逆に住んでみたいと思う人がいたらTwitterとかコメント的なもので良い感じに連絡をもらえれば大家さんに紹介させていただきます。
その際は多分お菓子をくれるから、一緒に食べながら尾黒さんを探しましょう。