【詩のようなもの6編】 遠投
【遠投】
願いを投げよう 祈るように
遠くへ 遠くへと
一度に覚える三つの合言葉
二人で交わす約束の灯
無謬も杞憂も千山万水
時代を動かす一滴は河のように
願いを投げよう 叫ぶように
遠くへ 遠くへと
【lost world】
何故他人の行動に苛つくのか
ベッドにいる間の渦巻く思考
失ったものばかりに目が向き
間接照明ですら眩しくて
真っ暗の部屋で
ぼんやりした記憶と
昨日のテレビの映像が
いつまでもぐるぐる
心の中はいつも真剣に
輝きを欲したlost world
その淵で夢の切れ端が
別れの催促を待っている
【12月のマリーゴールド】
一足早く住宅街を飾る
クリスマスリース
サンタを今から待ち侘びる
子供達の眼差し
それに抗うように
まだ枯れずいるマリーゴールド
結露をつける窓ガラス越しに
ツリーの下で朝を繰り返す
寂しくないと言えば嘘になる
死にたくないと言えば嘘になる
とはいえ今年ももうすぐ終わる
それを突きつけるように
一足早く輝くイルミネーション
全てを眩まして
人々を寄せ付け合い
全てを忘れさせて
飾る造花に子供達は笑い合う
【アクセス】
自動販売機から選択するように
ガチャガチャを回すように
脳みその奥
不確定な無意識
角度のない景色
忘れてる思い出
取り出して色をつけて
新たな世界を築く
歩く 走る 前頭葉の揺れ
綱渡りする言葉たち
手を差し伸べるようにアクセス
次の世界への橋造り
食べる 寝る
ゲームをするように
パズルを当てはめるように
繋がるシナプス
指先のシグナル
新たな世界はやがて
君の心根にアクセス
【昼休みコッペパン】
空を仰ぐ昼休み
片手にコッペパン
残り少ない小遣いで
いつもの味と初めての味
両方を食べてみる
喉を通る思いの丈
片手にコッペパン
それに合う飲料は何だろうかと
考えながら食べ終わる
腹に溜まってるような
溜まってないような
微妙な胃の動きに
過ぎる昼休み 曇り空の如く
【いつものこと】
絆創膏一枚で賄えない傷の広さ
零した飲料がつけた染みの広さ
冷たい空気に震えるのはいつものこと
初めての物に怯えるのもいつものこと
計算高くメタ的にこなす自分に辟易
泥臭く周りを見ずに走る自分に辟易
繰り返すほどに強くなるのか
歳を重ねる毎に弱くなるのか
鉛筆を削るように
風船に空気を入れるように
めんどくさい事に向き合うのは
いつものこと
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青