【詩のようなもの6編】 空から街へ
【空から街へ】
風が僕を引き裂くスカイダイビング
空を割って落ちる僕は
俗世の嘆きなんてもう遠い
家もビルも街全体がぼやけて
宙を裂く刹那は自由を纏う
ココアの甘さはもうどこにもなく
温もりも飲み干すたびに逃げていった
マルチビタミンで心を埋めた日々の虚しさも
今はただ風に散らばる粒子にすぎない
哀愁が僕を地上に引き戻すけど
抗うこの瞬間は重力も裏切りたい
未来なんて霞む光景より遠く
ただ落ちることを生きることだと知り
青春が自分の手にはないと気付いたこと
僕は青空の溜め息になる
【秋は夏】
秋は夏
夏は秋
君は君
名残惜しさに揺り揺られ
季節の変わり目 どっちつかず
着る服に迷い
雨に唄い
風に迷い
夢は幻
刹那に過ぎる今日の自分
【三つの扉】
一つ目の扉を開けば
香ばしいパンの香りが広がる
食欲は静かに満たされて
世界が少し明るくなった
二つ目の扉を叩けば
波のように押し寄せる徒労
睡眠欲が夢の中へと誘い
世界がしばし消えていく
三つ目の扉を沈黙の中で開けば
溢れるものを手放す時が来て
排泄欲は健やかな自分を取り戻し
世界は軽くなり再び歩き出す
扉から扉へ行き来する
一人の生活に慣れてきて
心と体が調和を取り戻していく
【秋の夜の散歩】
丁度いい肌寒さと柔らかさ
どことなくするいい匂いを
暗がりの道しるべにして
嫌な気分にさよならしに行く
秋の夜の散歩
衣替えしたズボンのポッケの中の
去年のレシートとメモ書きの字を
早速懐かしみ思い返すも
効率を求めない 我慢をしない
自然な自分に会いに行く
秋の夜の散歩
【喋り過ぎて】
友達と久々の再会
バイバイした後でふと後悔
喋らなくていいこと
いきすぎた自己開示
風呂上がり
なんとなく申し訳なく
裸のまま天井見つめて
振り返る会話と反省
直すべき癖が見つかるたび
ああああと声に出しジタバタ
またしばらく会うのが怖くなり
無性に寂しくなるその日まで
一人静かにいつもの生活へ
【リボルバー】
リボルバーが回るように
変容するライフワークバランス
横並びのバラエティー
タブーありきのエンターテイメント
さあ我が身はどうだろう
今も昔もロシアンルーレット
ギリギリで節を折り
くだらないラッキーパンチで
四季に咲く徒花と弾痕
夢も希望もない同士
最後の晩餐でも賭けて
弾の撃ち合いでもしてみるかい?
そのリボルバーで
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青