【詩のようなもの6編】 欲求と文房具
【欲求と文房具】
万年筆の一筆で誇りを感じ
ボールペンは夢を描き
ノートはそのすべてを受け止める
今日を描くため明日を知るため
消しゴムは失敗を許すように
芯は折れないように祈りながら
鉛筆が言葉を繋げ君の手で
誰かと結ばれるのを
世界が生まれるのを
文房具たちが欲求を点から線に変えて
君は少しずつ色を増やし満たされて
階段を上るように積み重ねるノート
【カラーペン】
机の上 18色 並ぶカラーペン
白い紙にはまだ何もなくて
透明色の姿で向き合う
赤は情熱を描き出して
青は冷たく空を映して
緑は草の香りを連れて
混ざり合うたび新しい世界
虹を紡ぎ出すその日が近づいている
机の上 15色 並ぶカラーペン
汚れることも傷つくことも厭わない
三原色の姿で向き合う
次の色
【背と星と影】
退屈が遠くにいきますように
茫漠が鎮まりますように
夜と朝の隙間の星に願い
揺れる光 踊る影
どこまでも どこまでも
心細く洒落にならない辛苦
影と影の隙間の陽にやられて
分かり合えない出会いを避けて
背を向ける日々
面影頼りに君の背を追いかける
星の光を頼りに夜を渡る
その繰り返し
【テーブルの上】
テーブルの上の物の位置
まんま僕の頭の中を表している
今お茶を飲みたい
今テレビを見たい
今絵を描きたい
今本を読みたい
その瞬間のしたいことがすぐ出来る
その繰り返しでできたテーブルの上
君から見たら散らかっていると言うけど
僕から見たら最適化の極み
だから僕は人のテーブルを見ると
その人の最近の頭の中を見ている
そんな気分になる
【スマホと空白の時間】
画面をスワイプ
恋を探してるのか
無知を避けたいだけか
気づけば指が勝手に動いてる
連続する通知
少しだけ心が跳ねるも
開いてみれば期待外れのメッセージ
自撮りもフィルターがあってこそ成立
いいねの数に辟易と安堵
膨らむのは物足りなさ
直視できない自分の姿
外では夕陽が沈んでいくのに
目を離すことができない
スマホの光の中に
何か答えがある気がして
空白を塗り潰すように指は動く
【歩む靴の声】
新品の靴が語る
まだ未知の道へと踏み出す硬さが
私に問いかけるように
皺と汚れを纏って
その道が私の足跡を刻んでいく
歩むたび少しずつ馴染んでいく
雨に濡れ泥にまみれても
靴は僕に立ち止まるなと言う
つまずきながらも前へ
やがて靴が疲れ果てた時
私たちが一緒に越えた道が
成長の形をした足跡になり
また靴紐を結ぶところから今日を進む
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青