【詩のようなもの6編】 欲望への道
【欲望への道】
傍らの黒い桃
それを見て月旅行に行きたい
そう思ったのは何故だろう
何の因果が有るのか
分からないまま
今日も取れない疲れの為に
自分を無理矢理シャットダウン
広がるのは濁った川に降り注ぐ火の雨
向こうで並ぶ白い影
清濁併せ飲めた方がいいだろう
でも少しくらい
柔らかい月に惚れていたい
目を開けばぬかるみだらけ
いつもの欲望への道
【雲の下の虎と馬】
善意あってこそ社会は回る?
悪意は何のためにあるのよ
満ち満ちてる両方向がしのぎを削る
光はまだ闇の中?
闇が光の中?
最前列で最後尾に選択肢を提示
残り物には何があるか
ことわざ通りにいかない人の世
構築と破壊に揺り揺られ
思い出だけが懐を慰めている昨今
虎と馬は何処を駆けるのか
善も悪もない欲求の一番上を
虎視眈々と狙い定めて
ビルからビルへ街から街へ
善と悪が入り乱れるのを
宇宙は何も変わらず遠いまま
【Hard pass】
省いて略す化けの皮
今日も私は普通ですか?
貴方の道理を理解したい
その為のセックスであり
その為の身と心であるのです
こんなにも誘っているのに
堕落的に過ごす貴方が出すのは
結局hard pass
私はまた悲しくなるのです
貴方の道理に私は要らなくとも
私は誰でもいいわけじゃない
楽しい私でいた方がいい
帰結した答えに従い
雑踏を踏まえた上での覚悟の証
自惚れた私は次の刺激を突つくのです
【膝小僧】
すってんころりん
昨日の僕が転んで手が地に着いて
初めて気付く本当の自分
起き上がった時にしか気付けない
星屑と迷フレーズが長い年月かけて
今日の自分を影法師のように
支えてくれていること
視点が増えること
即ち それが成長
大人になるということ
白紙のページに汚れが付く
それを破いて捨てるのか
その上に言葉を載せるか
結局最後に決めるのは今日の自分
【シャングリラとノルマ】
僕らの理想郷
此処にあるよ
個々に課せられたノルマ
共通幻想を齧り合う
ラッピングされた後悔
個々にあるよ
一冊の文庫本に刺激されたカルマ
天気雨を仰ぎ見る
嘔吐する平和
人の優しさに透かす鉛色
跨いだ鳥居で悪い神様も居ると知り
安堵を得る並木道
僕らの理想郷
全員が全員 同じ場所だとは限らない
それが身に染みたことで
飲み込めるようになったノルマ
【雨宿り】
セールスマンの決まりきった
口説き文句が雑踏に響き渡る
それを避ける術がない私は雨宿り
見る価値のないSNSの体験談
定型文と共にする金の匂い
それを避ける術がない俺は雨宿り
いつ晴れるんだろう
どこに行けばいいだろう
濁ったビー玉のような目で
別れだけ続いて
君と 俺と
この場所から駆け落ちしよう
そんな台詞を欲しているけど
実際は怖いから色付いたさよならをして
隣の空いた席で野良猫と雨宿り
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青