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【詩のようなもの6編】 空想ダンプカー

【空想ダンプカー】

走ります 運びます 排出します
土砂のように溜まる空想話
逃げ場が必要なあなたに
空想に浸りたいあなたに
心つなぐように現れる空想ダンプカー

重苦しい空気を変える
産業廃棄物に潜む宝物を見せる
子どもの夢と同じ現実を均す
あなたがあなたであるために
オススメとヒントをレコメンド
過去と未来が路になる空想ダンプカー
今日も走ります 運びます 排出します

【眼と胸の中】

豆腐メンタルのノンポリ
おしくらまんじゅうをすれば
たちまち潰れて地盤沈下
メゾネットタイプの家が羨ましくなるね

眼中にないくせに他人の功績を
ブルドーザーで均したくなるから
ほとぼりが冷めるまで
中指しゃぶる胸中

一体何を求めて
鋭い眼光を光らせているの?
青天井の欲望は
何処に心を迸らせているの?

尾鰭の付いた伝説と噂は膨らみ
風に運ばれて人の眼と胸の中で
スクスクと巣食っている

【世迷言と終電】

久しぶりに終電を逃す
家までは歩けば2時間以上
腹ペコで眠気もあるのに
世迷言と愚痴をブツブツ言いながら
歩くしかない真夜中

靴擦れと喉の乾燥が気になり出して
空を見上げても星の見えない
虚しい都会のひと時

こういう時に限って
呟いた世迷言が不幸を呼ぶフラグ

誰もいない場所で一人静かにコケて
震える唇 目に溜まる涙
終電を逃したことを更に強く後悔

帰宅して布団に入る頃には
また朝が始まりかけている

【永劫回帰】

結び直して
出会い直す
永劫回帰の常

少し先に見える景色
得るもの失うもの
また繰り返し

僕は僕の
君は君の
置き忘れた心の形
星を描く過程でビッグバン

結び直して
出会い直す
永劫回帰の常

【片道切符の一人旅行】

全てアンインストールした
無価値のスマホ片手に
キャパオーバーの心を宥め
今の自分が刻む放浪記にこそ
明日を呼ぶ風の音があるはず
そう決め込んで駅に向かう

ビターエンドが陰り
今日の私にぴったり

逃避行するには合わない
日当たり良好の向こう側
それでいい それがいい
片道切符の一人旅行

【滲むバスの窓】

滲むバスの窓
雨粒が街をぼやかす
いつもの景色

記憶の断片
自分の顔がぐにゃぐにゃ
垂れていく思い出の雫
シートに沈んで足元濡らし
バスは水たまりを跳ねる

手に残る温もりを思い出して
ふとポケットに手を入れたら
小さな紙片が湿っている

運ばれた自分の心
傍らには知らない景色と
隙間から光る露草



最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青