【詩のようなもの6編】 冬はつとめて
【冬はつとめて】
私の吐いた言葉が
排他的な空気の粒になる
そんなのもう嫌だから
雷鳴が呼んだ言葉は
冬の朝 上昇気流に乗せるよ
冬が嫌いだったけど
見えてなかった角度で
芯に根付くヒントが
暖かい陽に感じれたら
今日の私が一番私らしいと
冬の朝が一番好きと
街を渡り歩くよ
【虚構の物語】
虚構の物語に生きていく
やがて現実になると思い込んで
消えかけては蘇って
落ちては昇って
傍らから傍らへ流れる転がる
礫の一つ一つ
飲み干した蜜と密を忘れて
少しずつ近づく大胆な影と共に
虚構の物語に生きていく
やがて現実になると思い込んで
【鏡と鏡】
不思議でしょうがないことに
嬉々として近づいたり離れたり
雑多で猥雑で苦愛に依りながら
鏡から鏡へ渡り歩く人たち
角質と確執を無くせないことに
危機として悲しんだり落ち込んだり
予告なしの自分が現れながら
鏡から鏡へ渡り歩く人たち
【ダイジェスト】
ダイジェストで充分
今の時代そんな感じ
コスパとタイパを意識
要点さえ抑えたなら十分
でもその要点と対峙した時
身を粉にした経験のないことが
ダイジェストで頭の中を汚し
過ぎた時を取り戻したいと後悔
ダイジェストで充分?
充分かどうかは
自分が決めることじゃないと
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある
難しい尺度の連続
【寄り踠き】
捉えきれぬ螺旋の灯火
積み重ねてきたものは
正しさだけじゃないから
何度も思い出している
情けと仇と罪
背に腹はかえられぬ
祈りに浸る闇
幽霊の正体枯れ尾花
伸びていく若木の傍ら
支えるように影ながら
小さな棘を抜くように
今の心に愛を植えていく
楽で楽しい方に流されて
軌跡と奇跡に満ちて
今日の美しさが声に重なり
過去の痛みを薄らげるように
寄り添ってもがき合う日々
【積み立て】
執着したくないね
若いうちからそう思うのは
早すぎるのだろうか
生きる 生活する
答えのない今日の暮らし
どこにもない幸せ
どこにでもある不幸せ
平々凡々
自分の心 自由自在であれと
伸びる雲をそのまま私に見立てる
降りた螺旋から見つめる先々
花咲き続けるわけもなく
無駄な戦いは辞めてしまえと
心から言える今日を作る
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青