【詩のようなもの6編】 恋う希う
【恋う希う】
煮詰めた過去
今日まで冷凍保存
手を出して溶かしたのは君
気まぐれだとしても
ウミツバメのように
海の上を歩くように渡る君
童心に帰る
クエスチョンマークが増える
その度に視界に入ってくる君
終わらない夜に恋焦がれ
共に未来を希うのは僕
【あけすけ】
腹が立つとあけすけにぶつけ
その先の相手の選択肢を減らし
勝手に優越感を掠め取る輩
人知れず抱えた鬱を
シュレッダー前まで持って行っても
あけすけに刻むのを躊躇い
抱え込む自分
自然乾燥出来るならそれが一番
夢オチで終わるならそれが一番
現実はその鬱が呼んだ流行り病が
更に追い打ちをかけるように囁き
あけすけと自分の体を乗っ取り
空洞になった身体にあけすけと
天邪鬼な自分が伸び伸びしている
【カットアップ】
誤爆から生まれる未知の世界
プレッシャーが呼んだ言葉
ランダムに取り出した単語と熟語
今の自分が為すカットアップ
上下左右 ジャンクとスラング
文明の利器の及ばない脳味噌の奥
暗中模索 七転八倒 落下天水
瓦礫と宝石が織りなすカットアップ
【痛快無比】
優しさだけが人を救うわけじゃない
無下な自由詩が痛快無比
浸る孤独 羽毛布団の中
培う空想世界 痛快無比
無毒化されない現実
溶かされないジレンマ
進捗のない理想論に拱手
優しさだけが人を救うわけじゃない
それを知らないアイツに痛快無比
【背筋の砂】
猫が砂を蹴り上げ背筋にかかる
その音に僕は支えを見失う
パチパチと薄っぺらな音と共に
砕けていくのは過去の言葉
常備薬のように手元に置いた
お取り寄せの安定が途切れる夜
急がば回れと思うだけで
どこか焦りを纏った足音が
アフォーダンスのように仕掛けられた
次の一歩に呼ばれている
最後に差し込む一筋の朝が
部屋の片隅の陽だまりを作り
自分の心に反射し微かに彩度を上げて
いつもの自分を固めていく
【11月の慣らし】
爆弾低気圧とセットの年末鬱
五月病ほどではないけど
悪厄とつばぜり合い
弛む細胞たち
目覚まし時計の音は
何歳になっても慣れないまま
泣く子も黙る美談と漫談で
今日の一端やり過ごし
酸いも甘いも明日は我が身
むりやり開き直り
迎える最終回と新規チャート
ローテーションで飲む
抗うつ作用のハーブティーが
今日はよく沁みる
最後まで読んでくれてありがとうございました。
水宮 青