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【詩のようなもの6編】 菜の花探し


【菜の花探し】

小さな幸せが
先の見えない不透明に
色をくれるのを知って以来
排気ガスの往来の中
新鮮な朝の光を
菜の花と共に浴びたくて
いつか得た菜の花の匂いを
今の自分には似合わないと
分かっていて探している

誰とも優劣をつけたくない
物もお金もそんなに欲してない
目の前の青空とビル群が
ただ一つの景色である未来が欲しい
それを探す明るさを菜の花から得たい

いつか通ったあの頃の自分も
今の自分には似合わないと
分かっていて探している
過去と未来を繋ぐ菜の花の匂い

【符合と後光】

過ぎた季節を思い出すために
昔の日記を読み返してみる

今抱えてる悩みと
同じ悩みが書かれてて
進歩ないなと笑いながら
それが一番自分らしいと腑に落ちる

書いてある当時の対処法も
汚れてる落書きの間抜けさも
符合が合う後光になった

夜の光も味わう術さえ知れたら
全ては自分の中の光

走る光も語る光も伸びる光も
全て重なってるだけ

後光になる 符合が合う
それだけで次の季節は
軽くなる歩調がある

【ナンセンストラベル】

ナンセンスなものに惹かれ
無謀な雰囲気が欲しくて
目に見えない光を追う

失敗..失敗..あれ?
なんか上手くいった?
そんな感じで続くような
トライアンドエラー
周りの人たちは否定と傍観

一筋縄でいかない諸々に
自分だけがニヤついて
ナンセンスな轍を広げて
また失敗と空白を彷徨って
副作用ばかり突かれて
逃げるように 遊ぶように
明日は明日でナンセンスな
トライアンドエラーを続けていく

【トリレンマ】

痛し痒し喧しきトリレンマ
開かずの扉の前で右往左往
決め手に欠ける隙間の光量
誰の為に何を皮膚に刻むのか

痛し痒し喧しきトリレンマ
憂き身をやつす 時を稼ぐ
毒にも薬にもならない一臂
誰が誰の為に論を結ぶのか

痛し痒し喧しきトリレンマ
痩せ細る文化 膨らみ上がる物価
ひたひた迫る支配の匂い
何がどこにあるのか
昨日と違う夜を渡り歩く

【助奏】

胸中溜まるマグマは
怒りの火の玉に変わってしまう
訳あるのはどこも同じ

そのリスクを背負って
助奏を奏でることに徹し
明日を光にしようとしている
かっこいい人がいることも知ってる
それに続こうと浮き足立つ僕もいる

この短い時の遍きが
協奏曲になるように
理路の向こう側へ
淀む心をペンや楽器で刻む

星にはなれなかったとしても
口福を得る瞬間が誰にでもある
それを奏でることができるのは
光を辿る間だけだから

【波と光と僕】

愚痴ばかりだった一ヶ月前
今はもう違う 

少し先の河川敷から
聴こえるせせらぎと
滲む光が僕を照らす

人は弱い 僕も例に漏れず同じ
長いこと待ってた光を知り
ネックになってた何かが
波と共に消えていた

目標は喪失したままで構わない
言葉を書くことは希望で絶望
その思考にももう慣れてきた
また心は窓の隙間に置いておく
それで良い 

空っぽな僕は
目に見えない光と波を浴びながら
今日が自分に合うように
空疎と空想を歩く


最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青