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【詩のようなもの6編】 すずろありき



【すずろありき】

日本晴れの空が溶けた風
恭しい手つきで頬を撫でる

日陰の冷気が足元に寄り添い
陽射しの箔押しされた道を行く

砂時計の音もなく
足元の影が伸び縮み
揺れる草花が耳打ちする額の露

忘れ物を拾うように
振り返るたび空は黙り
陽射しと日陰の交差点

道は途切れるようで続くから
抜き足差し足のすずろありき

【のさ】

私の生活信条
のさ

のさ?意味を知らない?
のんびりしている様だよ
のさ

私の行動原理
汗をかくことより
休み有りの時間割り
じゅん伸び

毎日同じでも
面白いか面黒いかは
今日の私が決める
のさ

【夕惑いの果て】

訳知らず 心負えば
夕惑い 街に融ける
目垂り顔 星の持ち越し
夜の溜飲 逆撫で合う意

行雲の流れ絡み
逆流は心裂いて
灯まで手を伸ばせば
幸運の輪郭 落花流水

しどろ足で踏み込む迷い道
進むほど夜は淡く冷えて
深淵は此方を覗く
夕惑いの果て 

【濁り酒】

雨で濁る空気
傘で守れない切実
節目にするには遅すぎて
クビになった青春

誰のせいでもない
自分を殺したい 
人生の残骸を引き取る者は
感傷に浸るに終わる

ラッパ飲みした後悔は
胃の中にべっとり消化不良起こし
鈍い痛みに重ねる顰めっ面

逆撫でる空気
翳り合うシャッター街
心を畳む方法を知らないまま
苦痛を忘れるため飲む濁り酒

【沈黙と内と外】

脳を動かすには運動が大事
分かっちゃいるけど
沈む思考に付き合うには
キラキラした外は辛い

色んな世界の罵詈雑言には
最先端の誠意と愛が必要でも
沈黙も一種の言葉であり金である
人に寄り添う手段の一つと知り
改めて沈思黙考

浮かぶ思考は
中々思い通りの現実を呼ばないが
今日も話を縦に掘り下げ横に広げて
グラグラする内の中を動く

互いのペースを合わせながら
次の展開を掘り出し合い
欠点も好転する思いやりを
今からでも持っていたい

【冬銀河】

独り言を呟く曇天の雨粒
猫背のまま部屋に戻り
価値のない秘密に腐り
彷徨い疲れた未来予報

時空の余白と空白
世は仮寝
夢路の果てを明日と信じて
滲む藍 冷たい風

凛と手を翳し
白い薔薇が咲く一瞬
春の匂いと夏の蝉が混じり
秋を凍らす冬銀河


最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青