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【詩のようなもの6編】 進捗と解像度

【進捗と解像度】

私から始まる世界の全て
流し読みした教科書を傍らに
ドキュメント綴るクロスロード

不足しがちの解像度に
色を補正するように
ピクセルを足すように
時の荒波を観察しながら
崩れてく心を固めなおしていく

徒然なるままに
胃の泡のように
冷めた夜に夢の形は変わり
欠かせない人と出逢う

心の一部を是非に問わず
体全部で理非を論ぜず
私は私のままに前に進みたい

【運の正体】

運の正体 
問うことなかれ
運はきっと味方になる
それだけを踏まえて
今日も一歩一歩

哀愁と焦燥に背中押されて
雨垂れ弾く石の如く

憧れて届かなくて
蒔いた種に未来を託す

轍を踏み荒らして東奔西走
試行錯誤の末にまた悪足掻き

今日の風に運ばれて
空白と空谷を強かな勇気で越える

偶然…。
奇跡…。
説明できないこと
静かな声で言い換える
失敗の結晶体のようなものだと

【シャンプー詩】

シャンプー押して泡立たせるように
自分の中から言葉を出していきたい

相手に合わせて途切れないように
時に心を膨らませるような

言ってて恥ずかしくなるけど
過ぎた後で後悔はしないような

頑固汚れに四苦八苦しても
少しずつ時間かければ薄れるような

特別になり得る日常の轍
それを浮き上がらせる淡い言葉が
艶やかな自由詩に変わっていくような

シャンプー押して泡立たせるように
自分の中から言葉を出していきたい

【変遷スタジオ】

夜中に起きて朝に寝る
その過程は今だけのモラトリアム
歳を重ねれば抜け出せない往復路

突きつけられた変革期を前に
誰もが迷い酔いフラフラ
お利口なままマナー良く
抵抗感も免疫力もない夜明けは
いとも容易くいとまごい
シャカリキを貶し好きなことにイマース

探し物は一生見つからなまま
今を寂しく思い馳せながら
マナー違反でもお利口なまま
少し先の時代へ心を置きに行く
変遷スタジオ

【すべき論】

幸せも束の間
詩は死に依って廃る活字の水掛け論
背は瀬に寄って流行る独自の理想論
誰でもいいから気づいてよと
五十歩百歩の無頼人が綴るすべき論

枯れ木の隙間縫い歩く道中
私は気づいてしまう
他人は変えられないこと
でも言葉の持ってる空気を変えると
人は変わろうとするということ

またはじめから記憶の反芻と共に
染み付いていた傷跡が幸せを呼ぶ

すべきことは見つからずとも
意に沿わないことが見つかるたび
私は私だと気づき死が屡々遠くなる
すべきことに寄りかかってみる

【安心回路】

繊細な触覚がたどる安心回路
不安を周回 ルーツを展開
目に見えぬ地図を描き始める

無意識の帷は厚みを帯び
記憶の層に埋もれた頁
乱反射する淡色と幻想
剥がれ落ちた現実が動き始める

缶コーヒーを飲むように
悪意も善意も飲むことで
今日の自分は小さい音を拾う

いつもの空は怏々と広がりながら
どこか懐かしく温かな蒼
触れる指先は記憶の渦
優しい波の音
楽しげな子供の声
口笛に乗せる流行歌

繊細な触覚がたどる安心回路
不安を周回 ルーツを展開
目に見えぬ地図は終わりを知らず
私からあなたへ広がっていく



最後まで読んでくれてありがとうございました。

水宮 青