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リモートワークを嗜む BGMに助けられ文字の羅列と友になる

目の前のスクリーンには文字と数字の羅列があまりにも清潔に並べられている。そこには温度はなく、感情ももちろんない。カラーはあるが、思いやりはない。なのに隙だらけで、改善点がべたっと残っている。先ほど長い長い打ち合わせが終わったばかりで、私はほとんど頭が働かない。さっきから画面を右から左へ切り替えているだけで、特に何も進んでいない。マウスのカチカチという音だけが聞こえている。頭が働かないだけならいいが、要らぬことを考えそうになっている。ああ、寄り道をして余計なエネルギーを使ってはならぬ。それでも逃げずにこの道を進むにはあまりにも頭が疲れている。無造作に置いてあったイヤホンを耳とスマホにつなぐと、渇望していた音楽を脳に流す。

聴きなれた、でも好きな音楽を聴きながら仕事をする。脳を2分割して、片方では音楽を楽しみ、片方で仕事を進める。要らぬことを考えてしまいがちな時は、脳の半分を音楽で埋めておいた方が逆にはかどるのだ。そうでないと、要らぬ思考の方で全体を支配されることがある。要らぬ思考とは、ほとんど感情に結び付いていて非常に厄介だ。悔しさや後悔、焦り、不安など、彼らは過去さえも引っ張ってきたりして、みんなで一緒に膨もうとしがちだから大変危険だ。だから頭にBGMを流すことは、危機回避である。体力・気力を奪われないための対策である。この疲れた頭にも、まだ危険予知機能が備わっていたということだ。

耳から脳に、イントロが流れ始めると、まずは肩の力が抜ける。そうだ、首の力も一度抜いて、座ったまま伸びをする。あくびが出た。眠いのかもしれない。焦っていた気持ちが和らいで、少し音の方に気が向く。そのくらいがちょうどよい。音に乗せて息を吸い、PCの正面で姿勢を正す。さびに向かってデケデケと音の緊張感が高まってくると、私の脳も程よい緊張感に包まれる。PCのキーボードは、気づけば楽器の方のキーボードに変わっていた。さびに入ると、頭を少し上下に振りながら歌っていた。リズムに乗っているつもりだったが、気づけば自分がリズムを刻んでいる。次第に文字と数字の潔白な羅列が、怖くなくなってくる。ラララもしかして、あなたはそういう意味ですね。なるほど・・ということは、ラララあの情報が使えるかもしれない。デケデケ。そうそう、あの人があんなこと言ってたから、あ、ありましたね。なるほど・・。ラララそしたらここのデータを取得すれば説明できるかも。デケデケ。

イントロが7回目を迎えるころ、ようやく一区切りついた。今の私にできることはやった。今日はこれについてできることはほとんどない。明日同僚と確認することさえもまとめてしまった。思いやりも温かみも感じなかった文字と数字の羅列が、もはや親しい友人のようだ。君を理解するために私はいろいろと手を尽くし、幸いにも友情が芽生えたのだよね。その日眠ろうと目を閉じたとき、空中にイントロが流れ、友人が目の裏にまで焼き付いているのに気づいた。

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