てぃくる 295 呼び鈴
かさかさと
ちっとも響かない呼び鈴の紐を揺らす
誰かがわたしを
待ち望んでいるわけではない
でも
わたしはこっそり期待する
こうして呼び鈴を鳴らせば
誰かが気付いてくれるかもしれないと
わたしを
招き入れてくれるかもしれないと
「どなたかな?」
「わたしです」
「間に合っておる」
「そうですか……」
ぱたん
☆ ☆
わたしの目の前で
扉は無情に閉ざされた
それでも
わたしは呼び鈴の紐を振る
誰か
わたしに気付いてくれますようにと
光芒の房握りしめ鈴を振る
(2017-01-26)