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てぃくる 622 黄金

 樹木がいっぱいに抱えていた黄金が、徐々に失われてきた。


 黄金がなければ生きていけないわけではないが、黄金がいくらかあればそれなりに豊かに暮らせる。
 黄金をたくさん抱え込むと、その重みで身動きが取れなくなり、かと言って全て手放すと身を満たすものが得られなくなる。
 ちょうどいい黄金の量ってのが黄金比ってやつかね。見上げた大樹にそう聞いてみる。もちろん、樹が応えてくれるはずもなく、ひらひらと黄金のかけらを手渡してくれるだけ。

 それはただの黄金色の葉であり、わたしの食物や衣服に化けてくれるわけではない。しかし黄金が満たしてくれない心の隙間を、ちゃんと黄金色に染めてくれる。

 ああ、ありがとう。渡してくれる黄金の量はこれくらいでいいよ。これ以上もらっても、結局は全部返さないとならないからね。
 徐々に地肌を見せ始めた大樹がなおも黄金を手渡そうとするのを、背にかさかさと感じながら。

 冬ざれた参道を、後ろ手にひた歩く。


石仏や落ち葉に埋もれ眠るやう

(2019-12-14)

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