てぃくる 877 しおらしい
若い頃はやりたい放題の野放図なやつだったが、さすがに枯れたか。急にしおらしくなりやがった。
「しおらしい?」
そうだ。
「俺の名前はくずだ。『志雄』らしいなんて、憶測でものを言わんでくれ」
あほう。山のように塩をかけても枯れないくせしやがって。
「しおらしいっていうからには、しおしおになるんだろ? 俺はなってねえよ」
ぱきぱきになってるな。
「そうだ。しおらしいってのは見かけだけよ。春になればまたばきばきにのさばってやる!」
ちっともしおらしくなってないな。ああ、ケイピン持ってきてくれ。本当にしおらしくさせてやる。
◇ ◇ ◇
あ、ケイピンというのはクズにとてもよく効く除草剤で、楊枝に薬液を含ませたような構造になっています。それを茎にぶすりと刺すと成分が行き渡って根っこから先っぽまで枯らす……というわけですね。
でも、クズはグリーンモンスター。ケイピンをちびちび刺してなんとかなるような茂り方じゃないですからねえ。おとなしいのは冬の間だけです。
ご存知の通り、クズはマメ科なので、エンドウマメやダイズのような鞘に入った豆をこさえます。ものすごくのさばる強害雑草のくせに、種子は小さい。タネだけはしおらしいです。せめて食えるタネつけんかい!
何度でも濁る心と葛晒す
(2022-01-27)