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てぃくる 75 何かついてる

「おい、冴えない顔だな。どうした?」
「ああ、どうもこのところ右肩が重くてなー」

「四十肩か?」
「いや、関節が動かんとか痛いとかじゃなくて、ただ重いんだよ」

「病院には行ったのか?」
「痛いとか、動かんとかじゃないからどうも足が向かなくてなあ……」

「どれ、見せてみろ。万歳せ」
「ああ」

 ひょい。

「……。おまえ、力いっぱい憑かれとるわ」
「は? 何に?」

「吸血鬼」

☆ ☆

 ヤハズエンドウにびっしりたかっているのはアブラムシですね。農作物に付けば蛇蝎の如く嫌われるアブラムシですが、雑草に付いていても誰も何も言いません。
 ヤハズエンドウは一年草ですから、今のうちにしっかりちゅーちゅーしておかないと、ご飯がなくなってしまうわけで。吸血鬼も必死です。

 ちなみにヤハズエンドウに食いついているのは一種類じゃなく、二種類のようですね。緑色のがソラマメヒゲナガアブラムシ、上の黒いのはマメアブラムシでしょうか。
 何にでも取り憑くイメージのあるアブラムシですが、ご飯にする相手はちゃんと決まっています。吸血鬼にも、それぞれ好みの相手がいると言うことなのでしょう。

 でも。ヤハズエンドウが黒い種をいっぱいばら撒いて姿を消した後。吸血鬼たちはどこへ行くんでしょうね……。

 昼なのになぜか起きてる吸血鬼
  日射しを浴びて飲むレモネード

(2014-04-26)

 事故で夭逝してしまったサンディ・デニーの名作ですね。
 わたしが無人島へ持って行くとしたら、の十枚のうちの一つです。

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