てぃくる 200 すみ
同音異義語。同じ発音なのに、全く意味の違う言葉たちですね。
例えば、『はし』。橋、箸、端。ポピュラーなものだけでも三つありますね。一休さんのとんちにも使われていますから、みなさんよーくご存知かと。
そんなに紛らわしいのに、なぜ他の言葉で言い換えられないのか。文脈の中に置かれた時には、それぞれ識別出来るようになっているからです。
「食事の時には箸を正しく使おう」
そう言われて、橋を渡ろうとするのは売れない芸人さんくらいなものでしょう。
でも逆に言えば、文脈から切り離されてしまった言葉は、行き場を失って迷子になることがあるってことですね。ということで。お正月らしく、ちょいとばらしてカルタにしてみました。
【炭】
炭素の塊です。味も何もありませんが、なぜか苦さを連想する方が多いですね。苦いのは焼成の時に焼け残った灰の成分であり、それを洗い落としたいわゆる洗い炭には、味も何もありません。
酸やアルカリに極めて強く、長期間形を保ったまま残存するので、その土地における火災履歴の指標になりますね。同じ炭素の塊であるダイアモンドとは、色や硬さの差こそあれ性質がよく似ているかもしれません。
丸火鉢炭足してまたとば炙る
【墨】
炭には味がありませんが、墨には味がありますね。油煙を膠で固めたものですから、その有機物由来の味と臭いがあります。固形物である炭を溶き伸ばし、筆記に使いやすいように加工する技術を考え出した人はすごいなあと思います。
原料が炭化物ですから極めて退色、変色しにくく、文字を書き残すための染料としては墨は最上品でしょう。下手くそなお習字の証拠が、ずーっと残ってしまうという弊害はありますが。
墨散って書初められし黒子かな
【隅】
容器があるから隅があるのであって、その制限がなければ中央も隅もないんです。
個人から国家まで。何が隅にあって、何が中央にあるのか。その優劣や意味をことさら論じ合うのは、とても愚かしいことだと思うんですけどね。
個人から国家まで。等しく、いずれ容器は失われるのですから。
霜枯れや隅の草だけ生き残る
【済】
あくまでも途中経過であって、それで全てが解決したわけではないんですが。とりあえず、済というハンコを押しておきましょうか。
区切りってのは付くものではなく、付けるもの。そういう意味では、本当に済むなんてことは永遠にありえないんですけどね。
でも、ハンコ押さないと前に進めませんから。
えい。ぺたこん。
冬の田や気が済むまでは鳥を見る
相済まぬ隅には置けぬこの想い
墨走らせど炭と凝るる
(2016-01-04)