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てぃくる 594 褪せる緑

 センダンの葉の緑が、わずかに不安を背負うようになりました。


 センダンは、殺虫剤にも使われるインドセンダン(ニーム)と同じセンダン科でもともと南方系の樹木ですが、比較的耐寒性が高く、東北南部くらいまで見られます。
 ただ……落葉樹と言っても、かなり大雑把。気温の低下に伴って葉の養分を徐々に引き上げ、離層を作って木から切り離す……それが落葉樹の典型的な生活史なんですが、センダンはぎりぎりまでがんばるんです。

 一応黄葉はしますがかなりいい加減で、緑のまま落葉するものも結構あります。葉を落とす時も、少しずつ切り離すと言うよりも、寒風に耐えかねてばらばら落ちる感じ。落ちた葉もまだ緑と生々しさを残していて、一般の落葉樹とはかなり風情が違います。

 センダンだけでなくシナアブラギリなどもそうですが、落葉樹というより半落葉樹。温度が極端に下がらないところなら葉を落とさないよという趣向が、どこかに見え隠れしています。

 でも。夏の盛りを過ぎると、なんとなくではありますが少し葉の緑が淡くなり、全体に疲れがにじんでくるように思います。ぎりぎりまでがんばるものの、終わりもすでに織り込んでいる。そんな感じで。

 遠ざかる夏とともに褪せる緑が、じっと空を見上げています。


影伸びて葉の色淡くなりにけり

(2019-09-11)

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