てぃくる 944 水三様
「これまでずっといただいてばかりなので、少しばかりですがお返ししようかと」
「お気になさらず。差し上げたものは、いずれ私どものところに戻って参ります。ご自由にお使いいただければ」
雨上がり。
側溝の水溜りが雨雲を映し、木々の払い水がそれを穿つ。
水溜りも雨滴も雲も、同じ水でありながら見え方も行末も異なる。さりながら、同じ水としていつかは一つに束ねられる。
万物同根。違うものに見えながら、どこかでつながっていて、いずれ一つに連なる。
水に出来て私たちに出来ないのは哀しいが。せめて水を見て学べる者でありたいとは思う。
水澄むや溶けて映らず映りて溶けず
(2022-09-06)