案件絵本②えらい人関連本
案件絵本…扱いに気を使う絵本のこと
ここでいうえらい人とはあくまで、私が勤めている書店絡みの<えらい人>です。
例えば、会長、社長クラスの方々や労働組合関連の偉い方、県や市のお偉方など…。これら人達が、絵本を出版することがあります。
ご本人が制作の課程全てに関わっていることはほとんどなく、プロデュースバイ、とかフィーチャリング的な関わり方が多いようです。
ひとたびえらい人関連の絵本が出版されると、書店の本部周りの人たちの大騒ぎが始まります。まずはイベントやサイン会の予定が計画され、それに合わせて大量の絵本が入荷します。もちろん、店の入口付近のテーブル使用が前提です。
これらの偉い方々は自分の歴史や実績、研究成果の発表媒体として絵本を選んでいるのだと思われます。
絵本はお子さま向け’というのが前提なので、出版の意図は「お子さま達に自分の事を知ってもらいたい」ということでしょう。
しかし現場から言わせてもらうと、
そんな絵本の需要がどこにあるんでしょうか
という疑問のみ。
波乱万丈のおじいさんの歴史や、今まで頑張ってやってきたことを、有名な絵本作家の方が素敵に脚色してはいますが、残念ながら、物語の魅力に乏しい作品がほとんどです。
お話の展開にワクワクしたり、ギャグに笑ったり、ファンタジーにドキドキしたり…。
絵本を読むときのそんな子どもたちの気持ちに寄り添って描かれて丁寧に描かれている作品はあまりありません。
何故魅力的な絵本にならないのかといえば、やはり描き方に遠慮や忖度があるからなのだと思います。
伝記絵本として書けばいいのにとも思いますが、それはあくまで公認の偉人が描かれているのであり、単なる<えらい人>では誰も買いませんよね。
かくして、騒ぎが収束した頃に、静かに大量の在庫をダンボールに納め、虚しく返品作業を行うのは現場の私達。
「なんで、絵本にするわけ?」
やっぱり疑問です。
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