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摘花如歌無選集《はなつまみてうたうごとくたれながし》4
四、
今より七十余年ばかり昔、吾が住まい傍に流るる川の十里ばかり遡りたる山あひに、母方の祖父ら居ましき。
後添いの祖母険しき人にて、母ら異母の子女、女中にも比す労苦受けたるにやと。慮るほか術無し。
もとより母は語らず、時に遠き山背に目を向けしまま郭公の声聞きおれり。
2019/01/06 12:04
その昔母を運んだ
林鉄の線路も今は田畑に消えて
2019/01/06 23:14
妻や子をかえりみもせぬ奴といて
幸せになれると君は思うか?
2019/01/06 23:40
銀の紗と敷かれし霜を無慈悲にも踏み散らかして吾出勤す
この頃に前後し、幾たびか大和山城近江摂津の国を訪い、過去度々の遷都の名残りを探勝す。
くにの基を建つるには、一心正しく神威を祀り奉ずべし。
吾がひのもとの幼年期、すなはちそは古代にして、かかる朴訥なる政治哲学の現役せり。
されど奈良の地は往古汐留にして排水拙く、いったん雨水湛ずれば永く引かず、屡々飢饉病疫の蔓延るを許し居りたり。
天子南面すれど道定まらず、その苦悶や如何許りならん。
天孫たるが故に皇威即ち神威、而して我を祭らば必ずや安心立命と宣旨し依らしめたればこそ、いかに祭れど報われぬとあれば、効くと思ひし薬の寧ろ害あるが如く、民草のかへって上を憎むもむべなかるべし。
2019/01/07 23:26
彷徨える都に偲ぶ
いとけなき大和の国に焔立つるを
2019/01/13 06:28
今は無き鉄路の跡を遡り
幼き頃の母を愛でたし
2019/01/15 17:17
気を散らすつもりで歩む足先の向く先々に君想う春
2019/01/22 23:37
世に吹かれ
吹き寄せられて
映画の
故郷の山の
いかで青きか
2019/01/26 20:02
レジまわりの人の声さえ暖かく
老いては沁みる冬のスーパー
この頃動画JOJO第3部に再び魅入られたり。
2019/01/31 00:51
魂の拳で殴れやちよろず
その轟きの我を撃つまで
些か歌作に飽きたるか、少々遊びの出で来たりぬ。
2019/02/04 22:16
生まれ
這い
立ち
歩き
跳ね
転び
座し
寝て命果つ引力の子ら
2019/02/09 22:08
世界線記し連ねよ
今、君のこの瞬間を
今、
今、
今、
今、
2019/02/18 22:04
夜具の舟するりと夢の海に出れば黄泉路の華の香も悪しからず
すべてのテクストの紙とペンにて綴られし時代も、やがて一個の文明として画期さるるべきにやとて詠む。
2019/02/19 23:02
君知るや
失われたる文明を
嗚呼アナロギア
懐しき日々
かかる想起も特段新概念たらず、日々目前の線香の火の如き、ぼうと浮く夢想の泡、言の葉の提灯。
2019/02/25 20:29
くだくだと言い訳しつつまぼろしの後追いかけて生きるの楽し
2019/02/27 00:31
かつてなき時代は日々に到来す
いざ平成のちょんまげを切れ