長与善郎『青銅の基督』読了
27歳南蛮鋳物師の悲劇。時代はキリスト教信者を迫害していた江戸初期の物語。
主人公の萩原裕佐は自分の技術の自信のなさと、キリスト教信者の娘との結婚のための宗派替えができない苦悩に追い込まれていた。裕佐は神を信じていなかったし、必要ともしていなかった。
そんな裕佐の元に役所から銅の踏み絵像を依頼される。天啓とある執念に目覚めた裕佐は、素晴らしい踏み絵を作り上げる。そのあまりに素晴らしい踏み絵を踏むことができずに、多くの男女が捕まった。こんな完璧な踏み絵を作れるのは作者が切支丹だからだと、裕佐は役人に殺されてしまう。
私の皮肉大好きな性格は中学生のときには始まっていたのだろう。本屋でこの本の粗筋を読んで、すぐに感想文を書くのはこの本だと思ったのを覚えている。
裕佐の細かな心の動きと時代の動き。運命のいたずら。キリスト教という呪われた宗教。短いが、読み応えのある一冊です。
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