燃え殻『すべて忘れてしまうから』読了
『ボクたちはみんな大人になれなかった』に次いで読んだ。
著者は私よりちょうど10年若いが、当然時代背景は知っているうえ、著者の幼少時の性格や出来事は、私にも似た経験があり、何の引っかかりもなく読めた。
それにしても伝えたい気持ちを誰にでも伝わる表現で著すことは難しいはずなのに、著者の言葉は、川の流れを見ているようにスムーズに心の中を流れていく。
その中でも目を引いた言葉を3つほど挙げておく。
「僕も逃げて逃げて今がある」
実際の著者は本業では、委託会社から無理難題を押しつけられ、相当な苦労をしており、眠れない日々の中、鬱症状まで出てきているわけだから、決して「逃げて」きたわけではないはずだ。文章を書くことが逃げになっていることを祈っている。
「長生きって最大の復讐です」
いじめられて死ぬ人にはいじめた奴らに対する復讐がある、と私は思っている。相手を殺人者にすることで人生に足かせを嵌めようとしている。しかし、それは短絡的な考えであり、人生を大局的に捉えるならば、やはり長生きすることが大切だ。
「最初に僕たちが忘れてしまう記憶は、声なんじゃないかと思う」
考えたことがなかったが、過去を思い出してみると確かに声が思い出せない。この発見は新鮮だった。