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mericanadesico
小説家(超短編小説)
文章が1行も出てこない。それどころか、さっきから一文字も書けていない。
今週末までに短編小説2つとエッセイ1つを書かなければいけないのに。
エッセイならば書けるだろうと、パソコンの前に座って1時間経つ。前回、小説のネタがなくなって困ったという話は載せてしまった。もう書くことがない。いつかこんな日が来るのではと恐れていたことが現実になった。
やはり自分は小説家の才能などなかったのだろう。運良く新人賞など取ったものだから、調子に乗りすぎてしまったのだ。
小説の書けない小説家なんて存在価値がない。私は頭を冷やすためにベランダへ出た。風が気持ちいい。ここはマンションの6階だ。ここから飛び降りれば死ねるだろう。もう何もかも嫌になった。私はベランダの手すりを乗り越えた。
「わあー」
目が覚めた。夢だった。体中汗でビショビショだった。良かった。生きている。私はホッとして机から頭をあげた。小説を書いているうちに寝てしまったのだろう。
それにしても、小説がまったく売れないのに、売れたことで悩む夢を見ていたなんて、自分で自分が情けない。