田口ランディ『ハーモニーの幸せ』を読んで ーあとがきと総括ー
著者は編集者から本の題名として『ハーモニーの幸せ』という案を提案されて、一旦は拒否する。「ハーモニー」も「幸せ」もあまりにも手垢がついた言葉だし、「エグい芸風」の田口ランディらしくないと思ったからだ。
しかし、他のタイトル案を検討しているうちに、「ハーモニーの幸せは、お金がたくさんある幸せとか、美人であることの幸せとはちょっと違うものなんだ。誰かといっしょにならないと感じられない快感、誰かとわかちあわないと手に入れられない幸せ」だと思い、
「そうだ、幸せは奥深いのだ。とてつもなく奥深いものなのだ。なぜ『幸せ』という言葉に手垢なんかついちゃったんだろう。『幸せ』の力を、もう一度蘇らせたいと思う」という気持ちの変化により、最初のとおり『ハーモニーの幸せ』というタイトルになった。
今回3度目を読み終えて、不覚にもまた数か所で泣いてしまった。この人は純粋で繊細で、とても感受性の強い女性だ。感じたままをそのままの言葉にできる表現力が素敵だ。もうひとつの特徴は経験豊富で、その積極的な経験力が更に感受性を高める役割を果たしている。頭の中だけでは絶対に創造できない臨場感を、とても素直に表現できるのも、この人の才能なのだろう。女性の感受性と男性の感受性は違うのかもしれないが、このエッセイを読んで、自分の感受性を高めるためにも、世の中を広く見る努力が必要だと感じた。