見出し画像

江國香織『ひとりでカラカサさしてゆく』読了

人は必ず死ぬ。そして人は一人で死んでいく。一緒に死んだからといって、みんなで死んでいくわけではない。自殺した3人にはそれがわかっていたし、もちろん著者もわかっている。タイトルはそんな思いを込めたのだろう。

物語はショッキングな3人の老人の自殺から始まるが、その後はそれぞれの家族たちの物語と3人の老人の最期の時間までの物語が交互に、そして静かに語られていく。

3人の死は不幸な出来事なのか? いや、3人はともに人生に満足していた。自殺(私は個人的な考えとして自死という言葉は使いたくない)は悪いことなのか? 私は自殺とは最後の自由の行使だと思っている。人は自分の意志とは関係なく生まれてくる。死ぬことだけは自分の意志でできる。人生に満足して自殺できる人は羨ましい。家族は悲しむだろうが、人の自由を奪っていいわけではない。

こう書くと自殺賛成のように聞こえるかもしれないが、私が自殺に賛成するのは、人生に満足した人に限るということを付け加えておく。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?