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アスタロト公爵#21ハエの魔王ベールゼブブ
※この物語は 「阿修羅王」の本編より 悪魔の三大実力者のひとり、アスタロト公爵の作品を抜粋しています。特定の宗教とは 何の関係も無いフィクションです。
「身構えるなよ。何かしようってわけじゃない」
湖で大きな鳥とくつろいでいたブラックエンジェルは、いつもとは違う気配を感じて立ち上がった。
その眼を貫いたのは、初めて見る貴公子。
いや、人間ならば貴公子と呼んでいいほどの整った顔立ちをし、中世の貴族を思わせる服装をした青年。
しかしその姿には似つかわしくない、毒々しく恐ろしい妖気を放っている。
夜は怖いものがないはずのブラックエンジェルは、鳥の背にその手を置いて後ずさった。
【ハエの魔王 ベールゼブブ】
ルーツはエジプトの神バアルといわれ、月の女神アナト(アシュタロス・アスタロテ・アスタロト)を妻としていた。
妻とともに堕天使となって堕ちた時、その姿を巨大なハエに変えられ、天上界での一切の記憶を失う。
ベールゼブブはハエの魔王と名乗り、魔界で大魔王ルシファーに次ぐ実力者としての地位を獲得し、あわよくばルシファーに取って代わらんとの野望を抱く。
また、その妻アスタロトは男性に変えられ、ドラゴンにまたがる黒衣の美しい悪魔となる。
そして皮肉にもかつて愛し合ったはずの二人は、魔界の三大実力者、ルキフェル・アスタロト・ベールゼブブの一人として、敵対してゆく。
「俺がわからないのか?何度も会った事があるぜ」
「何・・・度も?」
「困ったなあ。じゃあ、これはどうだ?」
彼は右手を上にあげると、その手の平を月の光に差し出すように広げた。
すると、一瞬彼の姿だけが暗闇に閉ざされ、その影が大きな昆虫・・・ハエの形になった。
「ベールゼブブ!」
ブラックエンジェルは思わず声を上げると、その額に一筋の汗が流れた。彼・・・ベールゼブブは、再び貴公子の姿に戻った。
「やっと、思い出してくれたね。ブラックエンジェル」
「驚いたよ。あんたが人間の姿になれるなんて、知らなかった」
「・・・この姿を見せる事は、ほとんどないからね」
ブラックエンジェルは、片手で鳥の背をぎゅっとつかんだ。
「何の用だい?」
「ふーっ。ますますかたくなになっているね」
「何を・・・言ってるんだ?」
次の瞬間、ベールゼブブはブラックエンジェルの目の前にいた。
ブラックエンジェルは、はじかれたように湖の方向に退く。いや・・・。
「待てよ」
ブラックエンジェルは、ベールゼブブに腕を取られていた。
「そう警戒することもないだろう。おまえに何かしようっていうんじゃないと、最初に言ったはずだ」
何故だ!この私が腕を取られるなんて!
夜はルシファーすら私に一目置いているはずなのに・・・。
「ルシファーをも凌駕するはずの自分が、何故腕を取られたか、知りたいか?」
ベールゼブブは笑っている。笑っているその眼の奥は、氷のように冷たい。
ブラックエンジェルは震えがくるのを感じた。
堕天使として堕ちた時から、一度としてこの魔界で恐怖を感じた事はなかった。
ルシファーすら、恐ろしいと思った事はない。
そのブラックエンジェルが、初めて心の震えを感じたのだ。その長い黒髪すら、冷たい汗で濡れている。
「単純な理由だよ。俺が、強くなりすぎただけさ」
ベールゼブブは腕を離すと、にやりと笑い、やがて響くほどの声で笑い出した。
ブラックエンジェルは、ただその場に立ち尽くし、動けなくなった身体を鳥に預けたまま、ベールゼブブの次の言葉を待った。
ありがとうございましたm(__)m
アスタロト公爵#21ハエの魔王ベールゼブブ
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