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お久しぶりです。最後に連絡もらったの、いつだったかな。なんとなく就職決まったみたいな話…
「お世話になりました。・・・ありがとう」 もはや誰も住んでいない実家を去る直前、閉じ…
誰かに呼ばれたような気がして、はっと目を醒ました。 辺りを見回すと、先程と特に変わっ…
縦に連なって歩く私たちの横を追い越した軽トラが、石造りの立派な門の前で減速して、ゆるり…
ガイドブックによると、ブダペシュトという街の名前は、ドナウ川西岸のブダという街の名前と…
カチャン。そっと回したはずの玄関の鍵が、寝静まった家の中で思ったよりも大きな音を立てた…
世界には1枚の鏡がある、と遥奈は思っていた。 いつ見ても水平で、鋭利な光りが跳ね返ってくるだけの鏡。いや、ただの鏡ではない。マジックミラーなのだ。きっとあちらからこちらは、透けて全て見通せるに違いないのだ。 日常生活で壁――あるいは鏡かもしれないが――に出会った時には、必ず部活に出るようにしていた。今もこうして、もう泳ぐには冷たくなり過ぎたプールに身を浸している。 例えタイムが伸びなくても、どんなに水が冷たくても練習が厳しくても、彼女は秋冬のプールが好きだった。
背が高い。よくわからないけど、たぶん180cm以上あると思う。比較的小柄なわたしと並ぶと30c…
「最近、ことだま診断に興味があってさー」 画面越しに久しぶりに対面した彼女はページに目を…
打ちっ放しのコンクリートでできた吹き抜けに、実希子が手を2回叩く音が響いた。 「はい!…
「校長先生。今読んだこの話、おかしくないですか?」 窓際の一番前にいたまきちゃんが手を…
ウィィィィーンという音がして、黒いディスプレイが水色を映した。太い黒で縁取られた窓枠の…
薄暗い建物の中は、木と埃の匂いがした。板張りの壁を埋め尽くす貼り紙は、「災害ボランティ…
いつもとは反対側の無人改札の横にある駐車場。下校時刻を過ぎて学校を追い出された私たち12人のいるあたりは、ちょうど跨線橋の陰になっていて、ホームからは見えないはずだ。 低い山の端ともうすぐくっつきそうになっている太陽は、丸い輪郭がくっきりとしていて、オレンジ色の四角い光が私の目をまっすぐに射している。太陽を背に立つ同じワンピースの4人はすっかり焦茶色のシルエットになっていて、身長と髪型でしか区別がつかない。 「はい、じゃあさくっと続きやろ。明日も朝早いし」 影のひ