皮膚科専門医試験対策

はじめに

2024年度の皮膚科専門医試験に受験・合格しました皮膚科のみずけんです!
自分が合格までに行った勉強方法や参考にした教科書などをまとめていきますので、参考になれば「いいね」、「保存」いただければ励みになります!

皮膚科専門医試験について

現行の皮膚科新専門医制度機構認定専門医制度というものになります(2018年以降入局した皮膚科医は全員新専門医制度です)。
2018年度以前の旧専門医制度である学会認定専門医制度と混同しやすいですが、当記事では新専門医制度に絞って記載します。
皮膚科専門医試験を受験するためには受験資格を得る必要があります。

  • 研修期間:60ヶ月以上

  • 前実績必要単位:60単位以上 (学会聴講や発表・論文)

  • 症例レポート:入院/外来+手術

研修期間は60ヶ月以上と記載されていますが、受験年の研修修了までの研修を修了見込みとして含むことができるという点があります。
つまり60ヶ月終了見込み(皮膚科医5年目途中)で受験が可能です。

前実績のうち必要な単位は下記の通りとなっています。

  • 論文 最低 3編以上(1編あたり4単位) 12単位

  • 学会発表 8回(論文が多ければ少なくても可、1回あたり2単位) 16単位

  • 共通講習会、必須・選択講習会(1時間あたり1単位) 32単位

特に前実績のうち学会発表や論文の内容、そして症例レポートなどで、最終的に加点・減点の対象となります(1〜5点:1点は減点5点は加点、2〜4点は減点加点なし)。※減点・加点の点数は公開されていない。
前実績や症例レポートの書き方など、詳細については別記事で記載します。

無事、受験資格を得て、受験票が届いたら、12月に筆記試験(選択100問+記述20問)を受験することができます。
肝心な合格率は、毎年約80%前後が合格しますが、受験資格のハードルが他診療科よりも高いため、受験される先生は覚悟を持って受験に臨んでいると思います。

合格までの勉強方法

勉強方法には個人差があります。
近年は以前のように難しい問題を出題せず、臨床に即した問題とその解決能力が試されますので、まずは目の前の臨床を大事にしてください。
例えば、2023年問題11はアトピー性皮膚炎の重症度を示すEASIの理論上の最高得点を選ぶ問題でした。
普段から、EASIを計算している方にとっては、難なく解ける問題であり、正答率は高かったと思われます。
大事なのは、受験者のおおよそが解ける問題を絶対に落とさないことです!

その上で大切なのが、過去問、です。これを解かずして合格は難しいと思います。
下位2割を篩に掛ける試験ですので、周りと同じことを最低限やるべきと私は考えています。
皮膚科専門医試験には、公にはなっていませんが、問題1つ1つに正答率と識別指数が割り当てられます。
識別指数とは、各人の成績と問題の解答状況とを多変量解析したものであり、「+1.0」から「-1.0」の範囲で表示させています。

とある講演会で明言されていたのが、識別指数が+0.55以上の問題は、上位の人が正答、下位の人が誤答した問題で差がついた良問となり、プール問題となるとなります。逆に0以下、つまり識別指数がマイナスとなった問題は問題として不適切であり、削除問題となる傾向があります。
過去問を数年分解くと、似ている問題や同じ問題が出題されているのは、そのためです。そのため、過去問の反復演習は必須と言っていいでしょう。

過去問を解く上で、大事なことは正誤に囚われすぎないことです。
1週目は、おそらく多くの方が半分も解けないと思います。
1週目はかなり時間がかかり、知らない知識も多く、焦る気持ちが募りますが、必ず勉強すれば、習得できます。
よくある勉強法になりますが、間違えた問題や知らない知識は自分なりにノートにまとめたり、教科書を見たりして努力する他ないと思います。

間違い選択肢や問題文などに散りばめられているワードが翌年に出題されることは多くあります。その例を挙げてみましょう。
2023年問題42は神経線維腫症1型の臨床問題でした(なお、識別指数0.55以上)。
臨床写真からびまん性(蔓状)神経線維腫や叢状神経線維腫を想起させる問題で、新薬であるセルメチニブが選択肢で初出題されました。
翌年の2024年記述1では、セルメチニブを記述させる問題が出たため、正確に薬剤を覚え、記載できる必要がありました。
このように前年度に出題された問題が少し変えられて出題されるケースが多いです。
以上をまとめると、

  • 過去問を解く

  • 間違えた問題・未修得の知識をまとめる

  • 反復演習

となります。勉強を始めるにあたってガイドラインの通読や教科書を1頁目から読むのはコストパフォーマンスが悪いです。また過去問を解いていくうちに読むことになりますので、最初からそのように行うのは控えた方が良いでしょう。

何年分解けば良いか?

受験生の中でも、最も話題になることの1つで答えはないと思います。
周囲との足並みを揃えるなら、過去5年分は必須、と考えて良いでしょう。
私は2023年〜2013年分の11年分と更に2012年〜2009年までの記述を解きましたが、最低限、過去5年分をしっかりやっていれば十分だと思いました。
「何周した」なども話題になりますが、知識の習得には個人差がありますし、直近3〜5年分は周回すべきでしょう。

勉強を始めるタイミングについて

各々が日常診療や大学院生で研究をしながら、育児をしながら、など事情がありますので、一概に答えはないと思います。
ただし、やはり受験書類を提出するまでは、本格的には勉強にエンジンがかからないと思いますので、書類を提出した7月〜が無難なタイミングでしょう。
2024年度の場合は12月15日が試験でしたので、7月からであれば5ヶ月半勉強期間としてありました。
勉強をするにしても、医師国家試験の時のように平日に時間が十分に取れる訳ではありません。土日勤務、当直をしている方も多いと思いますので、7月からはスタートダッシュできるよう、各種勉強資料は準備した方が良いです。
私も試験5ヶ月半前の7月から本格的に勉強を始めましたが、周囲では4月から開始していた人もいました。
あまり1年前から「試験勉強!」と気張ってしまうと途中で疲れてしまうので、日常診療を丁寧に行いつつ準備するのが良いでしょう。
また週末に勉強貯めのような勉強法も致し方ないのですが、なるべく毎日、1日30分でも良いので勉強をするようにして下さい。毎日コツコツが大事です!

試験勉強に用いた参考書など

推奨度を★(ほし)で★(専門医合格のためには不要)〜★★★(絶対必要)で分類しました。

日本皮膚科学会過去問 推奨度★★★
最重要!!!
上記の日本皮膚科学会公式サイト(要会員)でPDFを2009年度分まで閲覧することができます(リンク先に飛びます)。
一部の年度で付図が白黒のため、カラー写真が必要な場合は学会から購入する必要があります。

②あたらしい皮膚科学 第3版 推奨度★★★
"あたひふ"と呼ばれるメインの教科書です。皮膚科専門医を目指すのであれば必ず購入しましょう。ただし、やや古くなってきているので、最新の過去問やガイドラインと照らし合わせながら使用していく形になります。2018年版が最新です。

③皮膚科学 第11版 推奨度★★
通称"マイナー”と呼ばれる教科書です。
"あたひふ"と比較しても疾患数は多いですが、アトラスは少ないです。
分厚いですが、サイズはコンパクトです。
やや細かいので、"あたひふ"をメインとし、こちらはサブとして使用するのが良いでしょう。

④ダーモスコピー超簡単ガイド 改訂第2版 推奨度★★
ダーモスコピーは出題数も多く、基本的な問題が多いため、得点源となります。
コンパクトで薄いため、持ち運びにも便利ですし、外来でもすぐに索引できる手軽さがあります。
過去問では同じ画像が使用されていたこともあります(著者の田中先生が以前出題委員だったため)。

⑤ダーモスコピーのすべて 改訂第2版 推奨度★★
その名の通り。ダーモスコピーを極めたい人向けです。
写真が大きく、こちらに載っていない疾患が出題されたらお手上げなくらいです。
分かりやすく、まとまっており個人的には買ってよかった1冊です。

⑥1冊でわかる皮膚病理 推奨度★★
皮膚科サブスペシャリティーシリーズのやや古い本です。
病理写真が大きく、矢印などで該当所見が記載されていますので初学者や病理が苦手な人にも優しいと思います。鑑別診断も記載されています。
値段は高めです。

⑦皮膚病理診断リファレンス 推奨度★
安齋先生が著者の、比較的新しい病理の教科書。
病理医が皮膚病理を学ぶ際には良いかもしれないが、皮膚病理初学者や専攻医にはやや難しい印象。
専門医試験の勉強に必要かと言われると必要ではないが、日常診療では役に立つ1冊。

JDA eSchool 推奨度★★
上記の日本皮膚科学会公式サイト(要会員)で閲覧することができます(リンク先に飛びます)。
JDA ePathologyでは、日本皮膚科学会総会で過去に開催された皮膚病理道場で使用されたスライドやバーチャルスライドを疾患別に学ぶことができます。
だいたいの疾患が載っているため、PCベースで勉強していた私はこちらで病理を勉強していました。
JDA eLectureでは、皮膚科の代表的な疾患に関する講義をE-learningで学んでいただけます。こちらは通勤中などに視聴するのでも良いでしょう。

ガイドライン 推奨度★★
最近ではガイドラインを読んでいないと解けない問題も出題されるようになりました。治療アルゴリズムや推奨度は最低限目を通しておきたいです。
上記の日本皮膚科学会公式サイト(要会員)で閲覧することができます(リンク先に飛びます)。

研修講習会テキスト (皮膚科専門医テキスト集) 推奨度★
受験年度とその前年度のテキストを手に入れて目を通しましたが、このテキストがないと解けない問題は出題されませんでした。
前実績で必要であり受講するので、テキストは保管しておきましょう。
全てを受講する訳ではないので、足りない部分は皮膚科学会ホームページにも申し込み用PDFファイルが掲載されており購入することができます(知り合いや後輩などから見せて貰うのがコスパ○)。

⑪新・皮膚科セミナリウム 推奨度★
日本皮膚科学会雑誌に毎月、掲載されている記事。
専門的な内容が多く、あたひふでは補えない際に使用しました。
セミナリウムを見ないと合格できない訳でもなく推奨度は★としました。
J-Stageに掲載されており、皮膚科学会会員は閲覧可能です。
※-Stage閲覧用のユーザーID/パスワードは日本皮膚科学会雑誌(紙)に毎号「事務局からのお知らせ」という項目に記載されています。

⑫各製薬会社開催のWebセミナー 推奨度★★
・皮膚科学LIVE-GYM 2024(全5回シリーズ)
・The Road to Dermatolosist(全2回)
・レジデントセミナー
などがあります。
その年のトレンドを知るのには良いですし、自己学習だけでは抜けている部分を各分野の専門の先生が講義をしてくださいます。
試験を作成された先生の講義はなかったのですが、やはり重鎮の先生方の講義は面白いし分かりやすいです。
過去問についての解説やその類題も講義の中では取り扱ってくださいます。
製薬会社開催のため、皮膚科専門医対策講義とは記載されませんが、余裕があれば絶対に聴講すべきだと思います。
特に皮膚科学LIVE-GYMは9月11日が第1回目でした。
7-8月である程度勉強が始められていると頭に入りやすいと思います。

⑬臨床皮膚科 最近のトピックス 推奨度★〜★★
軽く目を通す必要はありますが、時間をかけて読む必要はないだろうという意味で推奨度は★〜★★とさせていただきました。
自分の場合は読んでいて良かったと思いました。
2024年の問題にデルマクイック爪白癬の問題が出ましたが、最近のトピックス2023に載っていました。
普段から最新の検査や治療などに触れていて、製薬会社の説明会などで触れる機会がある人もいると思います。
そのような人は不要と思いますが、余裕があれば、目を通しておくのが良いでしょう。
受験年度と、前年度で十分と思われます。

まとめ

勉強法は個々人で様々だと思いますので、あくまで一例と思っていただければと思います。
上の教科書でないと受からないとかはないので、周りの受験生のペースを見つつ、効率よくできれば良いですね!
お役に立てれば幸いです。

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