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#224 真夜中の暴れん坊将軍


私の夫は聴力が優れている。
木を食う小さな虫が居て古い家具にたくさんの小さな穴が開いているのを見たことがあるだろうか?
彼は、あれが実際活動する『木を食む』音が分かる人だ。
加えて睡眠もかなり浅い。

そんな夫は就寝中にはトイレで流す水音にさえ目を覚ます。
従って、夜中に水を流す者はいない。

タイトルを見て、夜中の暴れん坊は Wood warm (木食い虫) だろうかトイレの水だろうか‥‥なんて思いつかれたかもしれないが、

真夜中に暴れているのはどうやら私らしい。

今朝3時半に大声で
"Not that one!!" (それじゃない!)
とぶった切ったらしい。
耳元での大声。もちろんは夫は何事かと飛び起きたことだろう‥‥

この間は
「やめてください!」
と大声で言って藻掻いていたらしく、

つい最近では
寝ていた夫は横っ腹を思い切り蹴られたらしい。
‥‥そう。夢の中で悪者を蹴らなきゃと、1,2,3で勢いをつけていれた蹴りがスパンと当たった感覚があったのだ‥‥


ここまで下書きに残しておいたところ、今朝また寝不足気味の夫から、今朝がたの私が
「わかってないのか!」
「No!」 
と怒る声に夫が飛び起こされたと聞かされた。


一か月以内の話なのに4エピソードはあるなんて、ちょっと酷くないだろうか‥‥
妻の奇行によって睡眠が妨げられても、夫は変わらず愛情を注いでくれているというのに‥‥


加えて私はいびきがヒドイらしい。
恥ずかしながら「らしい」「らしい」と連発することしかできないのは、自分では知らないことばかりだからだ。
(いびきに関しては、ドア越しの子どもたちの証言もある)


私はいつの間にこんな暴れん坊将軍になってしまったのだろう‥‥

 
思い当たることはいくつかあった。右隣の奥さんの不在によって(ご病気があったので)気がかりなのに訊けない私たち‥‥左隣のご近所さんに救急車が来ていたらしいのにどなたに何があったのかがわからなくて、(何もできなくても)知らないままでいいの?私たち‥‥とか‥‥
イギリスという国で、理想とする人間関係の構築をしてこなかった自分のせいだと自責してみたり‥‥
自責ばかりも辛いので、私は人と関わりたいのに、プライベートすぎる夫が悪いのだ、と責任転嫁しようとしたり‥‥
書くとキリがないので省略してしまうが、まとめると、私は今、
とても日本が恋しいのだ。

そこに至った分析を省略し、乱暴な結論に達したことをお許しいただきたい‥‥ 日本に帰ったのは一昨年の夏だった。
渡英以来初めて過ごした二か月間もの日本は驚くほど私のこころを満たしてくれた。まるでそれまで溜めていた思慕やフラストレーションをさらさらと溶かしてくれるように‥‥
見直すと胸がジーンとする滞在日誌を、noteにさえ公開できなかったほどに‥‥それは大切過ぎて、特別過ぎた。

そして「来年もまた来る。これからは毎年来たい」なんて言って帰ってきてたものの、
こちらの現実というものがあり、その想いは「今年は無理だな。毎年なんてとんでもなく無理無理‥‥」にすり替えられた。いとも簡単に‥‥

元旦に起こった能登の地震や津波による災害は、私に故郷への思慕と切なさ、不甲斐なさを募らせた。

人生は思い通りにいかないから、私たちは我慢や辛抱すること、あるものや出来ることのなかで折り合いをつけていくことを学ぶのだ。そこから工夫は生まれるし、感謝できる現状は数えきれないほどあることに気づかされる‥‥

わかっている。わかっているから黙っている。
けれども、魂が一番居たい場所から自分が離れすぎていることは、心に痛みをもたらすのだ。


今年、4月から5月の一番気候のよい時期に日本に行く計画をしている。
私ひとりでだ。
軍資金も十分でないくせに、どうにかしてあそこに行けないか‥‥などという想いが溢れ出す。旅の計画を立てていると時間があっという間に過ぎていくので、最近は意識してやめていた。
あれを予約しなきゃ、あの方に連絡しなきゃ、と気になることばかりなので、敢えて何も進めていないことも逆に気がかりで‥‥
日本でやりたいことの『我』と『欲』のほとばしりと、日本に住むことは無理という夫へのフラストレーションと、イギリスで満足できない申しわけなさの狭間で私はモヤモヤしているのかもしれない。

超プライベートな夫なら、こんな心の内を世間様にさらけ出すことは絶対にしないだろう。
けれど私は愛するnoteに書く。

抑えようとしている自分の気持ちがあるから、寝ている間に発散しているのだとしたら? 
ちゃんと言葉にできている気はしないけれども、
文字に起こしてみる価値はあるんじゃないかな、と思っている。
書くことで成仏しておくれよ、私の気持ち‥‥


蛇足
私は外でひとり飯というのができない人間だとずっと思っていた。寂しいしつまらなかった。それに無駄に自意識過剰になってしまう。
けれども誰かと一緒に会話しながらや、気持ちがどこかに行っている状態で食べた食事がどんなだったか思い出せないし、写真を見ても味をぜんぜん憶えていなかった‥‥
そんなことに気づけたおかげで、今回はおおいにひとり旅を楽しもうと決めた。
いただく日本酒を一口一口丁寧に味わおう。
いただく食事の色も食感も味も全部心に刻みこもう。
温泉で無心になろう。
ゆっくりゆっくり日本を味わいつくそう。
そう決めている。
枯渇した細胞の隅々まで、日本を感じて浸透させてこよう、
そう願っている。



パステルプラネットの幸さんのイラスト使わせていただきました♫

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