【小説】奔波の先に ~聞多と俊輔~ #4
2 出会い(2) その頃わしは志道家へ婿養子にいき、洋式の兵錬の披露の際お褒めに預かり、江戸への遊学を勝ち取った。江戸にて蘭学を学んでいたが、桜田門外の変の後、殿である敬親公のお小姓に抜擢され、名乗りも志道聞多と改めた。聞多という名は殿からいただいた。多くを聞いて多くを知るとか何とからしい。
江戸は刺激が多く心がはずんだ。ここ最近は浅草まで行って芝居を見るのが楽しみだ。たまにはと来た品川宿は下屋敷から比較的近く、花街もあって猥雑さにも華やかさにも満ちていた。今までは煩い大