コミュ障の私に「おっさんずラブ」が教えてくれたこと
タイトルが気持ち悪すぎるけどこれ以外に思いつかないので続けます。
作品のあらすじは省略し、ネタバレ前提で書きますのでご注意願います。
・おっさんずラブとの出会い
目次も気持ち悪い!!!!!!!続けます
「おっさんずラブ」は2018年の春に放送され話題になっていたテレビドラマですね。正確には2016年に単発版というのがあり、そのあとに制作されたこちらは連続版というそうですが、後者の話をします。
放送当時、「めちゃくちゃ上質なBLが地上波でぶちかまされているらしい」という噂をそれはもう度々聞いていたものの、私は自分の腐女子的な部分に対してものすごい引け目があり、どうしても手が出せず、単純に忙しさもあってリアルタイムでは見ていませんでした。
それからちょうど一年後あたりの、今年の春のある晩、
何があったか忘れましたが私はめちゃくちゃ疲れていたのか癒しを求めて、「上質な三次元のBLポルノが見たい……」という欲に取り憑かれ、
でもR-18が見たいわけではないので、西洋の美少年が男子寮でイチャイチャする洋画でも観ようかな…とかいう最悪な思考回路でNetflixを漁っていたところ、「おっさんずラブ」が配信されているのを発見。
ちょうどいいじゃん!つって、前半の色っぽいシーンをいくつか見て満足したら寝よう、ぐらいの気持ちで視聴を始めたところ、
これが予想をはるかに超えたすごいドラマだったので、今すぐラストまで見届けないと気が狂うと思い最終話まで一気に見て朝を迎えてしまった。
・本題に移る前に、武川主任の話がしたい
メインキャラの話は次でちゃんとするんで、その前にいったん武川主任への感情を処理しておかないと先に進めないのでします。
正直episode3までは「”おっさんが少女化する”というギャグパートと、旬の若手俳優によるガチで萌えさせるBLパートが交互にバランス良くやってくる、すごいエンターテイメントだな…」ぐらいの印象しかなかったんですが、
episode4「第三の男」で、武川主任が物語に文字通り殴り込んできたあたりから謎の迫力が出始め、ちょっとこれは軽い気持ちで見れないやつだぞ…と気を引き締めることになりました。
「仕事中に説教のテイで上司が部下を個室に呼び出す」「やたらとボディタッチ・顔が近い」果ては「看病と称して部屋に乗り込む」「足ドン」「俺があいつがいないとダメなの!」等、めちゃくちゃベタなBL展開を全力で形にしてくるという、
単純に演じる眞島秀和さんの文字通り体を張った熱演がすごい、ということでもあるんですが、
そういった文脈を踏襲しながらも、そこをものすごく真剣に描くことで、
「”おっさんの恋”というものを茶化さない」姿勢が、武川主任というキャラクターには現れているような気がします。
吉田鋼太郎さん演じる黒澤部長という”おっさん”のメインキャラクター(いや春田も牧も全員年齢的にはおっさんだから「おっさん”ず”」なんだろうけど、特におっさん的容姿なキャラクター)は、基本的にかなりコメディタッチで描かれます。
このドラマにおいてのコメディパート担当でもあるし、このドラマをお茶の間に届けるための「入り口」も担っていると思うので、大事な要素なのですが、
後半になるにつれ黒澤部長にまつわる物語もだんだんと真剣味を帯び、最終的に重要なメッセージを残すことになります。
そこに誘導するための布石として、武川主任の突然の乱入と大暴れは非常に大きな効果を出していると思います。
最終的に武川主任も黒澤部長も大失恋をするわけですが、
彼らはBLにおける「竿役」でもなく、「変態のおっさん」でもなく、
年頃の少女がするのと同じように情熱的に恋をして、そして失恋したのだ、
ということを、お説教的に語るのではなく演技と演出の迫力によって体感でわからせてくるという作りになっており、感動しました。
武川主任の数ある名シーンもだし、それと並んで
「黒澤部長の告白のバックで夜景の光がハート形になる」とかいうそれこそ少女漫画並のウルトラ過剰演出シーン、あれは歴史に残りますね…
みたいな固い(?)話をすっとばしても、
武川主任は本当にキャラ造形と演技が素晴らしいんですよ………「全力で恋をした1人の男」として最高峰なんだよ……
「こんなに切なくなるなら、恋なんてしなきゃよかった。」
なんてドまっすぐにベッタベタなキャッチフレーズをここまでしっかりと背負えるキャラクターそういないぜマジ……
武川主任に限らず「おっさんずラブ」は良い脇役がたくさんいて、サイドストーリーも良いものばかりで、マロとかもめちゃくちゃ好きなんですけど、そろそろ本題に移ります。
・ラブはそのまま暴力になる
本当にざっくり全体のあらすじを言ってしまうと、
「ノンケの主人公・春田が、上司のおっさん・黒澤と、年下の同僚・牧に同時に迫られ、どうするのか(=どちらを選ぶのか)」という物語で、
オチまで言うと「一度は牧を選ぶがうまくいかず距離をとり、黒澤の気持ちに応えようとするが、その違和感から牧への”気持ち”に気づき、告白し、結ばれる」という展開をとります。
(見るつもりなくてこの記事読んでたけどそういう話ならネタバレ知らずに見たかったよ!と今後悔している方、大丈夫です、全て知った上で見ても絶対に面白いし絶対に萌えられます。私が保証します)
上司のおっさん・黒澤部長は、一度は春田に振られるも諦めがつかず、(散々大喧嘩した末に和解した)元妻と作戦を立てて猛アピールを続け、牧とすれ違いを起こし気持ちが揺れている春田の”隙”をつき、同棲にまで至ります。
私が「この世で最も残虐で暴力的な行為」だと思っているフラッシュモブが出てきたときは本当にびっくりした。
終盤の、春田と黒澤部長の同棲から結婚式準備までの流れは、
ほとんどレイプシーンと言っても過言ではないと感じました。
(BL展開として解釈するなら「そういう意味でのエロさ」はあります)
抑えきれない気持ちに従って、覚悟を決めてぶつけた心からの想いも、
相手に同じ気持ちがなかったらそれは暴力になってしまう。
どんなに相手を想っていても、その気持ちをぶつけるという行為からは
「その気持ちをぶつけたい」という自分のエゴを取り除くことは絶対にできません。
そして、そうだとわかっていても想いをぶつけねばならない時がある、
ということを語っているのが、黒澤部長というキャラクターの大事なところだとも思います。
「告白ハラスメント」なんていう言葉がいつからかありますが、ハラスメント(嫌がらせ)という表現が適切かはちょっとわかりませんが、
黒澤部長がやったのはおそらく「告ハラ」と表現され得るもので、
それは彼がおっさんだからとか、「性的に魅力のない人間が人に告白するのはハラスメントに値する」とかいう話では全く!なく、
単純に「人に想いを伝える」という行為は常に”博打”であり、
意外とすんなり受け入れてもらえることもあるし、懸命に訴え続けたら相手の気持ちが動かせることもあるし、どんなにやってもダメな時だってある。そして結果がどうなるかはやってみるまでわからない。
だから抑えられない想いがあるならば、全力でベストを尽くせば、最終的にどんな結果でも、悲しくはなっても、悔いは残らない。
「だから告ハラとか言って怯えてないで全力で当たって砕けろ!」
というメッセージを黒澤部長は、正確には妻の蝶子さんは我々に投げかけているのだと思います。
そして、お互いにぶつけた想いの強さが奇跡的に一致し、衝撃が相殺された時にだけ、どちらの行為も暴力として相手に傷を負わすことなく、関係が成就するわけです。
もちろん成就するまでにはたくさんの傷を負わせ合うのだとも思います。
人と人とが強く想い合う姿というのはその全てが奇跡であり、
だから「おっさんずラブ」ラストの春田と牧の姿は奇跡そのものとして、
きらきらと輝いて眩しく美しく、誰もが2人を祝福する。
・ラブを暴力にしないために
これは恋愛の話に限ったことではなく、対人コミュニケーションの全てにおいて通じる話なのではないか、と、
「おっさんずラブ」を見終わったあと、日々対人関係に悩む中でだんだんと気づいていきました。
私は本当に昔から本当にとにかくあらゆる対人コミュニケーションが苦手です。
嫌なことを断れなくて苦手な人との関係をずるずる引きずってしまう、本当に仲良くなりたい人に嫌われるのが怖くて話しかけることもできない、そんなことを続けていてとにかく人との信頼関係が築いていけない。
「おっさんずラブ」に教えてもらったことを胸に、これらを少しずつ解決・改善していこうじゃないか、という意識改革が私の中で始まりました。
(これは話と全く関係ない犬を触っている武川主任とマロ)
「嫌なことを断れない」のは、最初から悪意をぶつけられている場合もありますが、それより「相手はこちらに好意があるけどこちらからはない」という事実を相手に突きつける勇気がない、というケースのが私の場合圧倒的に多いです。
これはつまり「相手の愛を、こちらが暴力にしてしまっている」とも言える。
黒澤部長の全力のラブコールが暴力になってしまったのは、それをきちんと断れなかった春田のせいでもあると言えるわけです。
(春田は決して不誠実な男ではないけど、とにかくニブチンなところだけがいろんな意味で”罪作り”なわけですね)
それはきっと相手のご機嫌を一時的にとれてしまうかもしれないけど、
誠実なコミュニケーションではない。
そう思ったらだんだんと少しずつ、嫌なことは断ったり(むしろ嫌なことほど大げさにOKしてしまうという悪癖があったのですが少しずつ抜け出している)、好意のない相手に好意のあるふりをしてしまう癖に抗ったりできるようになってきました。
また「ぶつける思いの強さが一致した時にだけ関係が成就する」という法則を意識して、無神経な人にはそれだけ神経を割かずに接し、雑に扱ってくる人は同じくらい雑に扱う、というようにすると、
そういう人を片っ端から拒絶しなくても交友関係をある程度続けることができる、という気づきも得ました。(そういう交友関係を続ける必要があるかどうかは別として、処世術ってやつです)
そして自分から仲良くなりたい人、愛を伝えたい人にそれが伝えられない、拒絶されるのが怖いという問題については、上記の通り。
「当たって砕けたとしても全力でやれば、せめて悔いは残らない」です。
だからもっと積極的にやろう、という場としてnoteも最近活用しています。
そして「愛は暴力になり得る」という自覚を常に持つこと。
これを忘れずにいられれば、愛をぶつけるという行為に本当に本当に慎重になって、自分の愛が暴力になってしまう確率を少しでも下げることができます。
慎重になった結果、やみくもに何も考えず愛を叫ぶのはやめよう、と心に決めた対象もいます。
そして「どんなに好きでもそれが暴力になってしまうことがあるんだ」という覚悟を先にすることにもなり、いざ拒絶された時の心構えもできます。
今私が愛を叫んでいる対象全て、いつ突然拒絶されても全くおかしくないし、それでいい、という心構えが私にはできています。
そして、いつか拒絶されてしまうかもしれないその日まで、
今続いている良い関係というのは全て私と相手とが起こした奇跡なのだ、と思ったら、その関係を本当に本当に大事にしたいという気持ちで毎日いっぱいになり、それ以外にかまってる余裕なんてないな、と思えるようにもなりました。
・恋愛なのか、友愛なのか
ついでだからこの話もしちゃおう。
田中圭さん演じる主人公・春田はノンケで、
林遣都さん演じるゲイの同僚・牧への「この気持ち」がなんなのか悩むという、めちゃくちゃベタっちゃあベタな展開をとるわけですけど、
最終的に”どっち”をとっているのかというと、結構微妙な、解釈が人によって分かれる結論を出しているのではないか、と私は考えています。
「牧が好きだ!!!!!!!」「結婚してください!!!!!!!!!」
と叫んでるわけだから少なくとも「ただの友愛感情ではない」という気持ちがあるのは確かで、恋愛感情としての認識もある程度あるはずで、
ただ「友愛”ではない”」のかというと、結構難しいんじゃないか。
要するにその境界って相当曖昧だし揺れ動くものなのではないか、と私は感じていて、その上で、しかし、
「俺は!!!お前とずっと一緒にいたい!!!!!!!!!!!!!」
と言語化される気持ちだけは絶対的に確かだと思うから、私はこのセリフが大好きです。
私は肉体や性自認は女性だし、自分が女性らしくないとは思わないけど、仲良くなりたいと思う人・気が合いそうと思う人は男性のが多く(これを発言すると本当に嫌われるらしいのであんまり言いたくない)、かつ男性が性的対象なので、相手に対して持っている気持ちが友愛感情なのか恋愛感情なのかはいつもわからなくなります。
だし仮にものすごく性的に”タイプ”な女性(二次元にはちらほらいる)と出会った時、自分がどう感じるかはまだわからない、という感覚もあります。
正直そういう女性と結ばれるのが一番幸せになれるような気もします。そんなんわからないけども。
また「恋愛感情を持っている」ということと「それを伝えて付き合いたい」ということは別だろう、とか、とにかく要素は複雑で、
人間関係というものは本当に難しい。し、難しいので面白い。
そしてややこしいことを全てふっとばして、まっすぐな言葉を放てる、
春田のような人は本当に強い。
私はなんでもかんでもややこしく考えないと前に進めない人間ですが、ややこしく考え抜いた上で、最終的にはそうありたいと思います。まだそうなるためには考えることがあまりにもたくさんあるけど。
・ラブはまだ止まらない
そんなこんなでたまたま最近「おっさんずラブ」について思い返したのでこの文章を書きましたが、劇場版の公開がなんと今月らしい。
今知ったので心の準備ができておらずまだ動揺している
どうしよう…劇場行くかな…絶対行ってしまうよな…でも行ったら絶対大変なことになるよな…本当にどうしよう……
ひとまず気になってるのはドラマシリーズでのマイマイの卑屈さはこのドラマにおいて絶対放置しちゃいけない問題だと感じているので、そこに切り込んでくれることを期待しています。
もう既に最高の予感がする告知画像
いや劇場版告知のキャラクター単体ビジュアル全員良い…ヤバい……
新キャラ沢村一輝演じる「狸穴迅」の恐ろしい波紋の予感もだけど……特に蝶子さんとマロが…ウッ……ハァハァ……武川主任が……………ウゥ………
これはマジで笑いが止まらない予告編
おっさん達がここまでラブに真剣に正直になろうと頑張ってるんだし、
私もラブに真摯でいたい。
ありがとうございました。おわり。
創作ダウナー美少女へのラブに真摯なtwitter↓