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毎月4日・14日・24日の前後に4コママンガの紹介や感想を投稿します。メンバーは、すいーとポテト、水池亘、量産型砂ネズミの三名です。/2024年3月以前の記事は Tumblr の旧ブログをご覧ください→ https://4komasusume.tumblr.com/
「十年くらいしたら人間のほうが強いんじゃないのかなと思います」 開幕前の記者会見で菅井竜也五段(当時)はそう語った。2014年、第3回電王戦。プロ将棋棋士とコンピュータソフトとの戦いは5対5の団体戦形式で行われた。前年の第2回では、大方の予想とは逆にプロ棋士側が敗北を喫した。特に最終戦、時のA級トップ棋士・三浦弘行八段が最強ソフト・GPS将棋に完敗した将棋は見る者に強い衝撃を与えた。三浦八段に明確なミスは一手もなかった。にもかかわらず敗れたということはつまり、純粋な将棋の棋
まあ、探偵には助手がいないといけないから……。 りの『はらぺこ少女と探偵と』はポンコツ探偵と食いしんぼの助手を軸にしたドタバタコメディです。本作の面白さの秘訣は「テンプレ」。テンプレを多用することは悪とみられがちですが、さにあらず。自由な発想でテンプレを楽しく使い倒しているのが本作なのです。それを端的に表したのが次のシーン。 ホームズっぽい服装でコテコテの決め台詞を放つ。小説のホームズは言わずと知れた探偵ものの始祖で、そこで描かれたベレー帽やチェック柄は探偵のパブリ
2024年9月18日順位戦A級、佐藤天彦九段-豊島将之九段。わずか3手目にそれは起こった。先手の佐藤が2分考え、6六のマスに角を上がる。この瞬間、全ての前例がなくなった。 角換わりなどの主流戦法に対して使う者の少ない一風変わった戦法が将棋界には数多存在し、それらはひとまとめに「奇襲戦法」「B級戦法」などと呼ばれる。しかしもちろんただ相手を驚かせることを目的にしているわけではない。どの戦法にも確かな棋理があり、ロジックがあり、実現すべき狙いがある。それが間違いなく有効だと
わかる、わかるよ……。 O仮名だモ『へるしーへありーすけありー』は芸術学部に住み着くダメ人間たちの様相を描いた作品です。特徴的なのは、その描写にフィクション感がまるでないこと。 コミカルに描かれていますが、確かに現実の芸術学部生も驚かなさそうだなという説得力があります。これ、作者の実感がこもっているように思うのですね。画家としても活動しているように、おそらく作者は芸術学部出身なのでしょう。そうでなければ描けない作品だと思います。 芸術学部の特異性と生徒の生態が実
去る8月某日、SPADIEというポーカーの大会があり、私はその中の1種目で2位になりました。「2-7 Triple Draw」というその種目はテキサスホールデムに比べて遙かに知名度がないですが、ここ数年ゆるやかに人気が上がっています。 ルールを簡単に説明すると、5枚の手札から要らないものをチェンジして「弱い役」を作っていくというものです。他の同種ゲームと合わせて「ドロー系」などとも呼ばれますね。詳しくは先月書いた記事を読んでください。 2位になった私は、プライズとしてい
はんざわかおり『アイドルビーバック!』は主人公・あんじゅの「アイドル大好き!」という想いが全てを動かしていく物語です。その情念は生半可なものではなく、どうしてもアイドルになりたくてオーディションを受けまくり、やっとの思いでメンバーになったアイビバを活動終了まで誰より愛し続けました。 本作がユニークなのは、どんなに話が進もうと彼女の性格や感情が全く変わらないという点です。彼女は言ってしまえばかなりの変人で、もう想いのメーターは振り切れてしまっていて凹んだり落ち込んだりする
ポーカーという言葉は特定のゲームを指したものではなく、共通の特徴を持つトランプゲームの総称です。その特徴とは、「手札で指定された役(ワンペアやフラッシュなど)を作り、その強弱で戦う」こと。これさえ守られていればどんなゲームでもポーカーです。 ポーカーの世界的な主流はテキサスホールデムです。2枚の手札と5枚の共通場札を使って役を作ります。シンプルかつどこまでも奥深い、とても面白いゲームです。ただ、もうみんな上手すぎるんですよね。勉強素材がネットに山ほどありますし、GTOとい
笠間裕之/宮月もそこ『さうのあっ!』はサウナをテーマにした王道きらら系学園4コマです。風呂に入るのが面倒でサボりがちな主人公・景山こかげと、サウナの本場フィンランド出身の少女・リューディアの交流をメインに描いています。 本作で特筆すべきは、サウナという主題に正面から向き合っていること。そしてそのネタの豊富さです。 そもそもタイトル「サウノア」の意味からして「へぇ〜」と感心させられます。こういった雑学・豆知識が随所に見られ、楽しいです。 フィンランドと日本のサウナの
2024年4月22日、東京・将棋会館―― 山崎隆之。誰よりも自由奔放な将棋を指し、誰よりも将棋を楽しむ棋士。あまりに豊かな発想ゆえ劣勢に陥ることも多々あるが、多彩な逆転術で勝利を積み重ねてきた。十八番の自虐トークに定評があり、ファンからの人気も高い。後輩の面倒見が良いことも有名で、若手関西棋士に力戦派が多いのは間違いなく彼の影響である。タイトル挑戦は2009年に1回。羽生善治を相手に3連敗で幕を閉じた。それから15年、A級昇級や棋戦優勝はあったものの、タイトル挑戦には届
若鶏にこみ『かみねぐしまい』1巻が発売されました。神様の子供という異邦人を起点に、双子の姉妹とその家族の心のやりとりを繊細かつ丹念に描いた本作は、まず何より物語としてずっしりとした手応えのある傑作です。また、この作者にしか描けない独特の雰囲気・世界観もまた大きな魅力のひとつでしょう。 本稿では世界観描写の基盤となっている特異な演出テクニックの数々について紹介します。いや本当に、凄いんですから。 序盤ですが、最も驚嘆したシーンです。ごく自然な日常描写の中で「(部活を)知
「自分にとって将棋は仕事なので、楽しいという感覚は昔からありませんでした」 狩山幹生はそう話した。昨年の8月、プロ入りから1年半ほど過ぎた頃のことだ。 棋士としての目標は、と問われると「もっといい家に住みたい」「普通の生活が送れるぐらいには活躍したい」と語る彼の言葉はおよそ新人プロ棋士のものではない。なにせ、タイトルのタの字すら出ないままインタビューは終了してしまうのだ。それは、彼が異端の棋士であると知るのに十分な内容だった。将棋世界2023年8月号に全文記載されているの
さいにゃん『てくてくっ!秘密リサーチ』の主人公・ひぐれは歴史に思いをはせながら街を歩くのが趣味の女子高生です。例えばこんなふうに。 古地図を片手に、「地下に埋められた川」である春の小川をたどって水源を探す。そんな散策は知的好奇心をくすぐるもので、とても楽しそうです。この楽しさを少しでも人に知ってもらいたい、そんな思いから彼女は散策のたび、動画に撮って自身のチャンネルにアップしていました。 ただ自分が楽しむためだけならネットにアップする必要もないですから、彼女は趣味を
名人戦が終結した。豊島九段の奮戦は凄まじく、絶対王者たる藤井名人にも危ない局面が多々あった。特に第一局は感動的な名局として語り継がれるだろう。 さて、この「名人戦」なるもの、どういった仕組みかご存じだろうか。 名人戦だけではない。棋界にはタイトル戦が8つあり、それぞれ条件設定が異なっている。それを完璧に把握している者は稀だろう。そこで今回は、各棋戦の特徴についてざっくり語っていく。 その前に、棋戦の序列について述べておこう。棋戦の格には順番があり、基本的には賞金の額に
これ、恐ろしいのは1回のループに半年かかっていることなんですよね。計12年半。頭おかしくならないのか。ならないのです。だって推しへの愛があるから! 青田めい『オールドヨコハマラジオアワー』は推しタレントの推しラジオ終了を阻止するべくループを繰り返す女性の物語です。彼女の熱量は全て「このラジオをずっと聞き続けたい」という思いによるもの。そこに混じり気はひとつもありません。 似たような思いを経験した人も多いでしょう。しかし、直後に半年前にタイムリープして「やった! これで
今年もABEMAトーナメントが始まる。初回放送はドラフト会議。ここが一番の見所と思うファンも少なくないだろう。本稿ではこのドラフト会議を見るにあたって、知っておくとより楽しめるポイントについて書いていく。 ドラフト会議とは ABEMAトーナメントは棋士が3人1組でチームを組み戦う団体戦だ。そのチーム編成はドラフト制により行われる。順位戦クラス上位から順にリーダーが決定され、各リーダーが仲間として取りたい棋士を指名していく。指名がバッティングしたらくじ引きで選ぶ。プロ野
推しと知り合いになったら、あなたはどうしますか? むぐら『escape into the light』はとある少女・つむぎが、大ファンだった匿名ネット歌手・miraiの正体・みきと学校で知り合うところから始まります。何とクラスメイトだったのですね。ものすごい偶然ですが、喜ばしくはありません。なぜなら、その「推しの中の人」は人を見下し寄せ付けない最悪な性格だったからです。 面白いのは、そこでつむぎがあまりショックを受けないところ。 彼女は推しそのものを目の前にして、「