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読書日記

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2023年5月の記事一覧

『木挽町のあだ討ち』は仕掛けがわかったところからが面白い

『木挽町のあだ討ち』は仕掛けがわかったところからが面白い

永井紗耶子の本は『女人入眼』を読んで、こりゃすごい人だ、と思っていました。この本はその時の話題ぶりを超えているので早く読んでみたいと思っていた1冊。
ミステリ仕立て、ということはそういうことでしたか。とニヤッとしながら読了しました。ある仇討ちをめぐって、その目撃者たちの話を聞いていくというお話。要は『藪の中』みたいなやつですね。

本に仕掛けられた大掛かりな仕掛けは、正直なところ冒頭ですぐにわかっ

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伊良部復活!『コメンテーター』

伊良部復活!『コメンテーター』

昨年読んで面白かった本ベスト5、を考えたときに(考えるだけで決められてないけど)『リバー』は確実に上位に入ります。本屋大賞にノミネートされなかったことで地団駄踏んだくらいですもん。『リバー』は犯罪小説、『最悪』も面白かったなー、とか『邪魔』ってのもあった。最近だと『罪の轍』もすごかったし、『オリンピックの身代金』もよかった…
などなど、奥田英朗のそれなりの読者なんです。

が、頭を切り替えないと出

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本売る者の矜持について考えさせられる『本売る日々』

本売る者の矜持について考えさせられる『本売る日々』

この本の主人公は、いつか版元になることを夢見て行商にあるく本屋さん。江戸時代ですので、もちろん皆が皆本を読めるわけではないし、本というのもの高級品です。だからこそ、本を読める人がいて、本について話せる人がいて、、、というそういう環境がどれだけ豊かなことなのかを考える事になるのです。
それほど出版物がない中で、本を読んでいる人=同じ本について語れるというのも幸せそうです。今の世の中だとそうはいかない

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間違いなく映像化困難『署長シンドローム』

間違いなく映像化困難『署長シンドローム』

よく「映像化困難!」という本が出てきますが、この本も別の意味で映像化困難だと思います。
なんたって、主人公の女性署長がどんなうるさ型も瞬時に骨抜きにしちゃうような美貌の持ち主、なわけですよ。そしてその美貌と彼女のキャラクターが本編の物語を進めることに大きく関係している、というわけ。
ドラマにしたって、他の美人女優を凌駕するオーラを出さなきゃならないわけで、派手に演出したらコントになっちゃうしなあ…

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