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忘れられない進路相談
今回の#日刊かきあつめ のテーマは、忘れられない先生だ。
ぐるりと記憶の糸を辿ってみてわかったのは、
結構忘れちゃってるなー。
て事だ。
あ、高校の進路相談でこんなことあったな。
「グランドホステス(今はグランドスタッフというらしい)になりたい」
と言ってみたところ
「無理だと思いますよ」
と担任の先生に言われたのだ。
え…?はい…?!
ドラマ「ドラゴン桜」では阿部寛と長澤まさみが生徒たちの可能性にかけ奮闘しているというのに、見事なコントラストだ。
一撃で私の淡い夢を粉々にしましたね…?
なんて言ってもわたしも本気なわけでなく、仲のいい長身の友人がスチュワーデス(客室乗務員)になりたいと言っていたので、その場のノリで、
「いーね!私はチビだからスッチーは無理だけどグランドホステスならなれるかも!そしたら一緒に成田で働けるね!〇〇ちゃんとなら仕事頑張れる気がするよー!」
とかなんとかいっちゃってたような気もする。
進路相談を前に今一度自分の将来についてまじめに考えてみようとするも大人になった自分なんてちっともイメージがわかない。
大学だって行けるかわからないのに…
だいたい生きてんのかも不明…
面倒になり件の友人との会話を思い出した私は進路相談の事前アンケートに、将来の夢を「グランドホステス」と記したのである。
回答必須項目だし書いちゃお。私立文系希望だし辻褄あってるだろ。
てな感じだ。
さて迎えた進路相談の日。先生は開口一番17歳の私にこう言い放ったのだ。
「グランドホステスねぇ、なりたいっていう生徒は多いんですよねぇ。でもねぇまあ難しいんですよねぇ。何故か人気でねぇ。だいたいの場合無理ですよ。」
先生はさらに続ける。
「まあ憧れるのは分かりますけどね、あれは要はチケット切りですからねぇ。スチュワーデスだって飛行機の中ってだけで主な業務、機内食の配膳係ですよ。ときにはお客の重い荷物持ち上げたりねぇ。結構地道な仕事ですよねぇ。なんだか華やかなイメージありますけどねぇ。」
確かにそうだと気づく一方でこれはこれで少し穿った解釈ではないか、とも思う。ただ先生は雰囲気で決めるな、本質を見よ、と私に伝えたく、あえてこんな風にセンセーショナルに言ってくれたのかなと思う。
空港勤務のキラキラ職業にふんわり憧れちゃってる身の程知らずな田舎の高校生ワタクシ。
「あ、そうですよねー、適当に書いちゃいました」
自分の浅はかさに消えたい。
嬉々としてスッチーと合コンするマジョリティを冷めた目で見下してそうな、この先生の世の中への独特な捉え方を私は実は結構気に入っていた。私がのちにフランス文学科への進学を決めたのもちょっと捻くれ者のこの先生がフランス文学を専攻していたってことも影響している。
先生の予言通り、わたしもスッチー志望の長身の友人も空港勤務をすることはなく、今は普通に都内で事務OLをやっている。
先生は相変わらずな進路相談をしているだろうか。
文:べみん
編集:アカ ヨシロウ
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