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その男バツ3につき②
今回の#日刊かきあつめ のテーマは#最近の学び です。以前に書いたその男とのその後を書きました。
わたしは男女交際が終わるとすっぱりそれ以降連絡を取らないことが多いのだが、その男とはなんだかんだずるずるとしてしまった。
その男は件の通り相当な事故物件だからして、だいたいのまともな女性は、あるところで
「こいつやべえな」
と気づき舌を巻いて離れていく。言ってしまえば私もその一人なのではあるが。
きっと出だしは順調なのだ。その男のやり口はこうだ。
ランニングデートやお茶や食事を経て仲良くなると、ある時その男のマンションに呼ばれる。そこは芸能人も住んでいるというウォーターフロントの高級マンションだ。賃貸暮らしの女子はそれだけで面食らってしまう。
建築士とインテリアコーディネーターの資格を持っているだけあり、部屋はモデルルームのよう。各部屋にはバリやハワイで購入したというセンスの良い絵画なんかが飾られている。(彼の話によると元妻との思い出の品々らしい。わざわざ言うなよ!)
おもてなしもすごい。何十万もするらしいガラス製のダイニングテーブルにベランダで育てたローズマリーをまぶしたチキンの丸焼き(カタカナの長い名前がついていたが思い出せない)、手作りのバスク風チーズケーキ、マカデミアナッツクッキーなど所狭しと並べられている。食後にはチューに備えてか歯ブラシまで渡された(笑)
そういや付き合った後もいつもごはんを作ってくれた。よるごはんもあさごはんもである。あさごはんに本格的なハワイアンパンケーキが出てきた時には、女子力ではすでに完敗と悟った。そればかりでない。なんならお弁当も持たせてくれるし。最新の家電で部屋はいつもぴかぴかだし、特別な日にはタワマン内にある高級ホテルのようなゲストルームを予約してくれる、など。それでいて性格は男っぽい。
市場価値が右肩下がりの中年女子をオトすなど赤子の手を捻るようなもの。
わたしと別れた後、何人かの女を早速家に招き入れたようでその都度報告(というか自慢)がきた。「かわいい」とか「稼いでる」とか「夜がすごい」とかなんやかんや。しかしきゃっきゃやっているこの男、ハタチの娘の父である。
このときの惚気は、何百人もの部下を抱えるバリキャリ女子だった。彼女に対するその男の評はこうだ。
「すごいエネルギー感じるし料理が超うまい」
その男の惚気を「ふーん」「ほー」とひと通り聞いてから「で、今度こそ大丈夫なんだろうな?(どうせまた逃げられる)」と茶化すのが常であったが、この時は少しばかりいつもと違う気持ちになった。
「ん?なんか大丈夫な気がする」
それってあなたにそっくりじゃない。
それだけの部下をマネジメントしてるならこの問題児の調教もできそうだ。
しかも彼の住む湾岸エリアにマンションを買おうとしていたらしい。
それってあなたにぴったりじゃない。
おそらく彼が命の次に大事にしているであろうタワマンにちょうど一緒に住めるじゃない。資産価値が高止まりしているそのタワマンを数年後に売り利鞘を元手に麻布の億ションに引っ越すのが彼の夢なのだ。
わたしの勘は当たったようで、七夕の写真が送られてきたのを最後に連絡がなくなり、ついにラインに既読がつかなくなった。
気が強いらしい彼女にわたしのラインをブロックする様に詰め寄られたのか。いや、彼女との関係が安定してきたから自らブロックしたのかもしれないな。超身勝手な人だから全然ありえる。
そっか。もう連絡取れないんだ。そういや電話番号も聞いてなかった。(まあ家は知ってるけど…)
そら今カノ優先だよね。最近の学び、というか改めて中学生のような恋愛いろはを復習した38の夏。嗚呼わたしの恋愛偏差値よ…
文:べみん
編集:円(えん)
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