介護現場の生産性向上をバズワードで終わらせないために
「令和6年度 介護報酬改定」により、「生産性向上推進体制加算」が新たに創設され、介護現場の生産性向上を評価する仕組みが設けられました。
皆さまも「生産性向上に資するガイドライン(以下、資料参照)」を目にしたことがあるかとは思いますが、正直、このガイドラインをお読みいただいて、どうでしたか?
「生産性向上ガイドライン」は序章に過ぎない
「生産性向上に資するガイドライン」は、前半に生産性向上に向けたPDCAサイクル(手順)が記載され、後半は取り組み事例や書式集になっています。
「生産性向上推進体制加算」の算定を見越して今年度から取り組まれているお客様へ関与している印象として、上記のようなPDCAに沿って、事例を参考にして、5S活動やICT化すれば、瞬く間に生産性が向上するという安易な考え方はやめた方がよいということです。
例えば、5S活動(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」)の事例がありますが、きちんとルールを決めていたのに職場環境の整備をなぜ怠ってしまうのか、なぜ使ったモノをあった場所に戻せないのか、なぜモノがあふれかえってしまうのかなどの課題の本質的に対する手立てがこのガイドラインには具体的に記載されていないこと、また取り組み成果に至った期間(時間)が書かれていません。
要するに、とっつきやすそうな事例に取り組み始めたけど、思うような成果や変化が起こらない、「なぜだ?」という壁にすぐさま直面する可能性が高いのです。
以前の記事でも触れていますが、この「なぜだ?」を解消し、取り組みを推進していくうえでも「Check」「Action」が重要なのですが、このガイドラインだけではその本質的な「なぜだ?」を解消する内容が乏しいと感じます。
その「なぜだ?」を解消するための内容が「業務の改善活動の支援・促し役」として別に掲載され、上記記事の「+1」の存在の必要性についてまとめられています。
このガイドラインは生産性向上に向けた即効性のある参考資料としての位置づけではなく、生産性向上の必要性を認識させ、「挑戦してみよう」「試しにやってみよう」と生産性向上に取り組もうかどうか悩んでいる施設・事業所の背中を押すための序章的な資料という位置づけのモノと、私は捉えています(桃太郎でいえば、鬼退治を志してきび団子を携えて旅に出かける辺り
でしょうか笑)。
生産性向上を阻害する要因を排除する
アウトカムを重視する組織のマネジメント力を高める
「介護現場における生産性向上の取組を支援・促進する手引き」で「+1」に該当するプロジェクトリーダー(推進役)の役割や関わり方についてまとめられています。
私が関与しているお客様はレゴ研修などのマネジメント研修も行っているため、5S活動やICT化に取り組む上でも、マネジメント力の向上についての視点が盛り込まれています。
といった「介護現場における生産性向上の取組を支援・促進する手引き」で求められる内容が計画に反映されています(さすがです👏)。
5S活動を取り組み始めたけどすぐに元に戻ってしまう、ICTを導入したが十分活用されないといった「なぜだ?」の壁となりうる「心理的安全性が低い組織」「納得感の低い意思決定(実行力、継続力が弱い)」「主任層がマネジメント力を発揮できていない」といった生産性向上を阻害する要因を解消するためにも、アウトプット(やっておしまい)ではなく、真の生産性向上に向けたアウトカム(取り組み成果・変化)を重視する体制を構築しましょう。
取り組みに必要な工数から必要な時間の見通しを持つ
業務の偏りやバラツキを解消するための取り組みとして、生産性向上だけに限らず、「マニュアルの見直し・周知」というキーワードがよく出てきます。
マニュアルの見直しを行うのはいいんですけども…、そのために業務量が増え本来業務がおざなりになり、生産性が低下するなんてことがあると本末転倒です。
前項に記載したように、ガイドラインには取り組み成果に至った期間(時間)の記載がないため、「マニュアルの見直し」にどの程度の工数(時間×日数×人数)が必要かを積算しておき、必要な時間(=スケジュール)の見通しを持っておく必要があります。
「マニュアルの見直し」にあたっては、①見直すマニュアルを選別する、②マニュアルを見直す、③マニュアルを周知、④マニュアルに沿っているか評価、のような段階があるとします。
①見直すマニュアルを選別するという取り組みにどのくらいの工数が必要でしょうか?
次回の進捗管理するまでの1か月間まるまるかかりますか?
必要な工数として、8時間×多く見積もって2日×1人=16時間が必要ということになります。
1人(8時間勤務)だと2日、2人だと1日、4人だと4時間(半日)で終わるということです。
一方で、②マニュアルを見直すとなると、①の選別したマニュアルの数が変数となり、見直しにかかる工数も変動するため、必要な時間(スケジュール)を多めに確保しておく必要があります。
このように業務にどのくらい時間がかかるのか(業務に時間を振る)という進め方をしなければ、生産性向上の成果・変化は起こらないでしょう(時間に業務を振っている職員が多くないでしょうか?)。
なお、「マニュアルの見直し」は業務の偏りやバラツキを解消するためのあくまでも手段であり、「マニュアルの見直し」が目的にならないよう注意しましょう。
生産性向上推進体制加算はアウトカム加算
ご承知の通り、「生産性向上推進体制加算(Ⅰ)」では、生産性向上の取り組み成果として、以下のデータ提出が必要で、なおかつ改善されていることが求められます。
要するに、取り組み成果・変化が評価されるアウトカム加算であるということです。
私の所属法人の施設でも、見守りセンサー、グループウェア、介護記録ソフトなど必要な機器類は導入されていまが、だからといって上記のよう利用者のQOL等が高くなるように活用できているか、超過勤務時間が減少しているか、離職率の低下につながっているか(=年次有給休暇の取得状況が改善される要因となっているか)、機器のの導入による手順の工数の削減や時間的な短縮などの検証はこれからです。
関与先では因果関係図の作成、改善方針シートの作成のPlanで4か月かかりました。
早いのか遅いのかは分かりませんが、介護現場の生産性向上をバズワードで終わらせないために、4カ月かけてやっとスタートラインに立った感じです。
管理人