ため息俳句 ユキノシタ
年をとると、身体のダメージはそう簡単には回復しない。若者はそこがわかっていない。ぎっくり腰は、昨日に較べて痛みの軽減は、わずかである。
今は寝転んでしまうと、起き上がるのが辛いので、なるべく起きているようにしている。
庭先に出てみると、紫陽花に花芽が出始めていた。
まるで野茨のような小さな花の薔薇。
いやいや、これはこれは、ユキノシタ。
子供の頃、ある晩、熱が出て、耳が猛烈に痛むことがあった。
中耳炎である。
その時に、母が行った応急処置のことを忘れられない。
母がしたことは、ユキシタの葉を搾って出た汁を、傷む耳の穴に流し込んだのだ。これで、耳の熱を冷ますのだと。ひやりとなが込んだ搾り汁は、瞬く間に耳の奥で沸騰するかのように熱くなった、それを流し出しすと、心持ち痛みがひいたような気がした。翌朝、耳鼻科に行くと、・・・・、嗚呼あれは痛かった、なんて乱暴な・・・と、忘れられない。
さて、母のしたことは馬鹿げた民間療法のように今の人なら思うであろうが、そうではないのだ。
誰に教えられたの分からないが、とっさに母がしてくれたことは、理にかなうことであったのだ。
そういうことで、このユキノシタは母の思い出につながるものである。
ユキノシタは、漢名では虎耳草(こじそう)に登良乃美美(とらのみみ)と訓じるのだそうだ。だが、和名のユキノシタの名の由来は、雪のような花の下に葉が見えかくれするからだとも、冬、雪の下にあっても葉が枯れずに残っているからだともいわれるそうだ。
いずれにしろ、その花は今が盛りであるが、舞い散る雪のように見えなくもないが、自分としては、まことに小さな妖精の乱舞のようにも見えてくる。日陰に咲く花ではあるが、一度見ると忘れられない。
楽しみしているこの花を守ってくれる、妻の花好きに感謝するべきであろうか。