見出し画像

ため息俳句 ふたりのビーナス

 今回の諏訪への小旅行で心づもりしていた行き先は、諏訪大社上社前宮から尖石縄文考古館を訪ねるコースである。共に、茅野市に所在している。
二日目の朝、宿を出て、諏訪高島城、諏訪善光寺とすすんで、諏訪大社本宮はす通りして、上社前宮に着いた。
 誰しもご存じのように、諏訪神社には四か所あって、この諏訪大社上社前宮、上社本宮、下社春宮、下社秋宮とあるのだが、上社前宮が諏訪神社発祥の地と云われている。他の三社とはまったく趣きの異なるお宮である。ここについては、いつか機会があれば、触れたいと思う。

諏訪大社上社前宮本宮

 そこから向かったのが、茅野市尖石縄文考古館である。今回の小旅行で訪れたかった目的の施設である。
 自分は考古学についてもミーハーな聞きかじりファンであるので、話半分以下としてお読みいただきたい。
 つまり、「ジョーモン」である。
 ここで我が配偶者は、縄文時代というのは1万年以上の長きにわたっていると、初めて知ったらしい。いや、高校の日本史の時間きっと聞いていただろうが、それはそれは遠い昔のことである。この縄文の時間の長さが、ショックであったし、実感も出来ないのであるが、そのいづれの時にか作られた二人のビーナスと呼ばれる土偶の女性に魅せられたようであった。それほどに、迫力のあるみごとな造形である。


縄文のビーナス・縄文中期中葉
仮面のビーナス・縄文後期前半

 これまで、美術館やら博物館やらに連れ回ってきたが、ここまで食いついてきたのは、かつてなかったような気がする。同じ縄文でも、十日町周辺で見た火炎式縄文土器には、冷淡であった。いやまて、松本美術館での草間彌生展以来、あの時も興奮していた。うーん、なんか共通する感じがするなあ。
 また脱線しそうだ、話を戻そう、・・・・なんとなくわかる気がする。この国宝なる二体の土偶は言うまでなく妻とは同性の女性である。このことの意味は大きいように思う。感応し合う何かがあっても不思議はない。

 この縄文のビーナスが発掘された棚原遺跡は、霧ヶ峰の南麓、正面八ヶ岳連峰を見渡せる地である。ここからは旧石器時代の石器とみられるものも出土していて、早くもそのころから人々が暮らしていたという。
 豊かな森と清らかな湧水に恵まれた豊かな土地であった。それに、ここから非常に良質な黒曜石を産出したことで知られる星ヶ台もまでも日帰り出来る距離であったという。
 仮面のビーナスが出土したのも棚畑遺跡の東方四キロの中ッ原遺跡である。
 そんな環境に暮らす人々に、このそれぞれの土偶がどんな意味をもったのだろうかと、妄想を巡らすのは今日のようなけだるい午後には、もってこいのお話である。


縄文の森の入りひと吹かれけり 空茶