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「古今十七文字徘徊」帖

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古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
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#井月

#11 七夕の夜はかりそめの踊かな  井月

#11 七夕の夜はかりそめの踊かな  井月

 こう暑いと、老耄はなはだしい己のおつむから、句を絞り出そうすると、一層暑苦しさが増してくるので、先人達のお作を読ませていただいて、七夕の夜を祝いたいと思う。

七夕の夜はかりそめの踊かな  井上井月

 いいねえ。
 岩波文庫版「井月句集」の脚注では、「七夕踊」について柳亭種彦の「小女の人情に盆を待ちかねて、七夕よりをどる故のなるべし」という言葉を引いてある。本格的には盆踊りなのだから、七夕の夜

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#6 桃さくや片荷ゆるみし孕馬 井月  

#6 桃さくや片荷ゆるみし孕馬 井月  

  井上井月の句を見ていると、句に大袈裟なことばの身振り手振りがないところに一番惹かれる。自分のような生半可な俳句初心者でも、概ね理解できる作品がほとんどである。
 一定の事前知識等というか文化的素養をもたない人であっても、わかる言葉で俳句を作ったのは一茶であるが、少し時代を下がって井月もそうであるように思う。
 といっても、一茶も井月も当人は、詩歌についてはそれ相応に知識や修練の時期が基盤にあっ

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