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「古今十七文字徘徊」帖

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古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
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#季語

#23  われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 杉田久女

#23 われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 杉田久女

  曼殊沙華と呼ぶか、彼岸花というか、この使い分けが案外難しい気がする。
 例えば、この句などは曼殊沙華でないと面白くもなんともなくなるだろう。

われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華 杉田久女

 サタンに憑かれた女人の頬が、曼珠沙華の点す光に照り映えて、深紅に染まっている、そんなイメージが浮かんでくる。
 これが「彼岸花」では、なんだか幽霊っぽくなってしまう気がする。恐ろしさが、陰にこもってくる

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#18  冥冥といつしか卯月二十日月  鬼房        

#18 冥冥といつしか卯月二十日月 鬼房        

 さて、当地に見える今夜の月はとてもきれいだ。
 蒸し暑い夜なのだが、東の窓に月が昇ってきて、なにやら秋めく。
 蒸している割には、大気もすんでいるらしく、清かに月が見える。

 今は陰暦でいうと七月二十日の晩である。
 そこで、今夜の月は「二十日月」。
 「二十日月」は「更待月」と呼ばれている。
 「更待月」なら一番名高いのは陰暦は八月二〇日の月である。
 今年の暦で云うと九月二十二日の月である

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