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「古今十七文字徘徊」帖

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古今のふれあった俳句作品についての所感を記録しておくノートのまとめです。作品にふれあうというのは、きわめて個人的なことで、古典として名高い名句とか、コンクールの優秀作品とか、そう…
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2024年5月の記事一覧

#7 とべないほど血を吸うて 山頭火

#7 とべないほど血を吸うて 山頭火

 「十七文字徘徊」とか看板を挙げているが、特に定型至上主義ということは、全くない。ここの「十七文字」という語は、「俳句」というジャンルを意味するので、有季、無季、定型、自由律、どれであろうと「俳句」であれば、よいのである。というより、表現者が、これは「俳句」であると意図していれば、そのように受け止めるのが当たり前のことだ。

 種田山頭火については、俳句好きな人であれば自分などよりはるかによく知る

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#6 桃さくや片荷ゆるみし孕馬 井月  

#6 桃さくや片荷ゆるみし孕馬 井月  

  井上井月の句を見ていると、句に大袈裟なことばの身振り手振りがないところに一番惹かれる。自分のような生半可な俳句初心者でも、概ね理解できる作品がほとんどである。
 一定の事前知識等というか文化的素養をもたない人であっても、わかる言葉で俳句を作ったのは一茶であるが、少し時代を下がって井月もそうであるように思う。
 といっても、一茶も井月も当人は、詩歌についてはそれ相応に知識や修練の時期が基盤にあっ

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#5 恋のない身にも嬉しや衣更 鬼貫

#5 恋のない身にも嬉しや衣更 鬼貫

 このところ、上嶋鬼貫『独ごと』がお楽しみである。
 岩波文庫の復本一郎校注「鬼貫句選・独ごと」と同じく復本さんの講談社学術文庫「鬼貫の『独ごと』」全注釈を並べて開いて、読んでいる。
 句については、「元禄名家句集略注・上嶋鬼貫 篇」(玉城司・竹下義人・木下優 著)が頼りだが、これは図書館から借りたので、何時までも手元にはおけないのでちょっと急ぐのであるが、耄碌した脳みそでは果がゆかないのだ。

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