原作の怖さを映像化した監督のセンスと主演女優の演技力が見事に花開いたホラー。
スタンリー・キューブリックとは犬猿の仲となったモダン・ホラーの巨匠スティーヴン・キングの本を初めて読んだのはデビュー作『キャリー』(1974)だったか二作目の『呪われた町』(1975)だったか記憶がおぼつかない。
どちらも翻訳されてすぐに読んで面白いわ怖いわで大喜びした。
『キャリー』は、キングが3ページまで書いてゴミ箱に捨てた原稿を読んだタビサ夫人が完成させるように励ましたいわくつきの作品だ。
『きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第29回』
1974年に出版されて76年に映画化され大ヒットした。
監督はカルト映画の傑作『ファントム・オブ・パラダイス』のブライアン・デ・パルマ。
主人公のキャリーを演じる個性派女優シシー・スペイセクがキャリーのイメージにピッタリだった。
容姿がさえず性格も内気で存在感のうすいキャリーはクラスメートのいじめの対象だ。
ある日体育の授業のあとシャワーの最中にキャリーは初潮を体験する。
狂信的なキリスト教信者の母から月経についての話を聞かされていなかったためキャリーは恐ろしい病気にかかったと勘違いしてパニックを起こす。
そのありさまを見ていたクラスメートたちは面白がってキャリーをからかいナプキンを投げつける。
首謀者のクリスは罰として卒業記念パーティー参加禁止を担任教師から言い渡される。
彼女をいじめたクラスメートのスーは罪滅ぼしとして学校一のイケメンでもてもての彼氏トミーに卒業記念パーティーのパートナーにキャリーを誘ってもらいたいと相談する。
こころよく引き受けたトミーはキャリーに接近する。
思いもけかない申し出に当初尻込みしていたキャリーもトミーの誠実さに心を打たれてOKする。
片やパーティーへの参加をとり消されたクリスはキャリーを見せしめにするために恋人とともに養豚場で豚を撲殺して血を抜き取りパーティー会場の体育館に向かう。
全校生徒注目のうちにパーティー最大のイベント“本日のベストカップル”に選ばれたトミーとキャリーはわれんばかりの拍手に祝福されて表彰状をうけとるためにステージに立った。
喜びを隠しきれず恥じらいながら満面の笑みをうかべるキャリーと一緒に喜びを分かちあうトミー。
拍手が頂点に達した瞬間天井につるされたバケツいっぱいの豚の血がステージ上の二人に浴びせられた。
気を失って倒れるトミー。
どす黒い豚の血でうつくしいドレスを血まみれにされ何が起きたかもわからず呆然と立ち尽くすキャリー。
一瞬会場は凍りつくが生徒たちのみならず先生たちもキャリーをあざわらい始める。
悲しみと怒りと絶望が極限状態となったときキャリーの秘められていた超能力が爆発する。
彼女のサイキック・エネルギーで体育館の扉が閉ざされ、天井に吊るされた電球、窓、すべてのガラスが割られて飛び散り、人を殺傷し、会場内は阿鼻叫喚の血塗られた地獄絵図と化す。
体育館を破壊し参加者の大多数を殺害して憎悪のエネルギーを爆発させながら我が家にもどったキャリーは母親を殺害し家を崩壊させて自死する。
後日生き残ったスーはキャリーの墓前に花を手向け・・・・・
そしてあっと驚くエンディングで恐怖がしめくくられる。
アカデミー主演女優賞にノミネートされながらも受賞を逸したシシー・スペイセクの印象が強烈に頭にこびりついている。
原作の持つ恐ろしさを映画『キャリー』はみごとに映像化した。
スティーヴン・キングの小説は数多く映画化されているがほとんどの作品は安っぽいホラー映画仕立てで終わっている。
唯一の成功作が『キャリー』だとぼくは思う。
この続きはまた明日。
明日はぼくが一本だけプロデュースした映画のお話です。
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