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映画の話と言えばどうしても外せない3本の作品について。

時にはなんの注釈も解説も解釈もいらない超のつく娯楽映画がある。

生涯の三大傑作は30年以上変わらない。

オーソン・ウェルズ監督の『市民ケーン』(1941)、黒澤明監督の『七人の侍』(1954)、スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』(1975)だ。

『きっかけ屋☆映画・音楽・本ときどき猫も 第26回』

『市民ケーン』
幼い頃から神童と言われていたオーソン・ウェルズ26歳の初監督作品。

演劇とラジオドラマの演出は経験済みだったが、監督未経験で映画史に残る傑作を完成させたウエルズは天才としか言いようがない。

アメリカ中の地方紙を買い漁って成り上がり、スキャンダルネタで売上を伸ばした億万長者の新聞王ランドルフ・ハーストをモデルにしたためにハーストによる上映妨害運動が起おり興行的には惨憺だった。

しかもアカデミー賞9部門にノミネートされたにもかかわらずハーストの陰謀により脚本賞のみの受賞で終わったが、パンフォーカスや長回しなど斬新なテクニックが効果的に使われ、映画技法のお手本のような作品に仕上がっている。

パンフォーカスとは被写界深度(ピントの合う範囲)を深くすることによって目の前にあるものから遠くにあるものまですべてにピントが合っている画面のこと。何気なく見ていると分からないが、実は人間の目では体験できないシュールな映像だ。

カメラが360度回転するにしたがって時代が変遷する長回しのカットなど映画ならではのかたり口調が『市民ケーン』の魅力を醸し出している。

詩、漫画、演劇に才能を発揮していたオーソン・ウェルズの名前が一躍全米に知られたのは1938年10月30日のこと。

ウェルズが演出したCBSラジオの番組「マーキュリー劇場」ハロウイン特別番組H.G.ウェルズの『宇宙戦争』の放送が始まったのは誰もがくつろいでいる日曜日の夜8時だった。

ゆったりしたビッグ・バンドのダンス音楽が流れるオープニングでとつぜん「未確認飛行物体がニューヨーク郊外に着陸した」という臨時ニュースが報じられる。

火星人が地球に攻めてきたことをドキュメンタリーじたてのラジオドラマ化したその番組を現実のニュースと勘違いした多くの聴取者がパニックをおこし、社会学の素材としてとり上げられるほど有名な事件となった。

後日、パニックに陥り被害を被った聴取者からラジオ局は数々の訴訟を受けたが、ウエルズの絶妙な演出ですべてラジオ局の勝訴に終わった。

ウエルズが担当した「マーキュリー放送劇場」はラバル局NBCで高聴取率を誇る「チェイス・アンド・サンボーン・アワー」の裏番組だった。

ウエルズはこの番組を何度も聞いて視聴者のクセを観察した。

毎回番組の冒頭でホストがその回のゲストを紹介する。

ゲストが人気者の場合聴取者はそのまま番組を聴き続けるがゲストがさほど人気者でなかった場合多くの人がダイヤルを他局にまわして他に面白い番組がないかを探し始める。

ウエルズはそこに目をつけた。

「サンボーン・アワー」に多くの聴取者が耳を傾けている時間に「これはラジオドラマです」というナレーションをウエルズはくり返させた。

そしてゲストの紹介が終わって聴取者がいっせいに他局にダイアルを回し始めた頃を見計らって「未確認飛行物体がニューヨーク郊外に着陸した」という臨時ニュース風のコメントを流して聴取者の耳を捉えた。

これにより実際に未確認飛行物体がニューヨークに着陸したと信じてしまった人たちがパニックを起こしたのだ。

後々被害を受けた聴取者が訴訟を起こしたがCBSは「何度もこれはラジオドラマですとナレーションを流している」と釈明してすべて勝訴した。

この日の番組の舞台裏を描いた1975年のテレビ映画『アメリカを震撼させた夜』や、ラジオドラマ『宇宙戦争』のCDブックは今でも手放せない。


2本目が『七人の侍』

世界で一番好きな映画だ。

この映画に関しては以前書いたのでここでは割愛する。

ぜひこちらをお読み下さい。

この続きはまた明日。

スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』のお話です。

お寄り頂ければ嬉しいです。


連載第一回目はこちらです。


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