現代語訳『我身にたどる姫君』(第三巻 その31)

 このような状況のため、女三宮への思いは少しも冷めてはいなかったものの、少しでも動こうものなら、女四宮の異常なまでの嫉妬心が必ず察知するに相違ない。自分の軽率な行動で女三宮が気の毒な立場に追い込まれてしまうのは不本意で、相手を思うが故に手紙一つ書くことさえままならない。常に女四宮に付き纏《まと》われて身動きができない権中納言に、中納言の君は嘆いた。
「何とも情けなく心外な権中納言殿の心だ。先日まで女三宮様に情熱的に言い寄っていたのに、これほど冷淡になってしまうとは」
 それ以上に権中納言本人は幾度となく落胆し、女三宮へ伝えるべき言葉も気後れがして届けることもできずに一人で嘆き続けた。

(続く)

 女四宮の異常なまでの嫉妬を身をもって知った権中納言は、女三宮に迷惑を掛けるわけにはいかないと、身を慎むようになりました。これで収まればめでたしめでたし――となるのですが、果たしてどうなることでしょうか。

それでは次回にまたお会いしましょう。


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