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現代語訳『さいき』(その14)

 代わりに手紙を受け取った佐伯の正室は、首を傾《かし》げながら封を切り、綴《つづ》られた言葉に目を通して息をのんだ。

(続く)

 佐伯に妻がいることが、ここで初めて読者に明かされました。しかも、都で見捨てた女の手紙をいきなり読まれてしまいます。――いわゆる修羅場からのスタートです。

 わずか一行に多くの情報が詰め込まれていますが、原文はもっと短く、「内の女房、この文を取りて見てあれば」と、初登場の佐伯の妻が、当たり前のように手紙を受け取り、微塵《みじん》も迷うことなく封を開けて読み進めています。この絶妙なタイミングでの登場と文章のスピード感、わたしはとても好きです。

 なお、今回登場した佐伯の妻(正室)が三人目の主要人物になります。これからどのように物語に関わってくるのでしょうか。

 それでは次回にまたお会いしましょう。


【 主な参考文献 】


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