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現代語訳『さいき』(補足その2)

 ここでは『さいき』の謎のひとつである「京の女はなぜ佐伯に惚《ほ》れたのか」について、個人的な推察を述べておきます。
(以前にふせったーで投稿した内容と重複します)

 結論から言うと、清水寺の本尊である「十一面千手観世音菩薩」による救済《くさい》が原因だと考えています。

 この「観世音菩薩」は「慈悲で人々を救う」と言われています。信心深い者たちの味方ですので、日頃から清水寺に通っている京の女も救済の対象となることでしょう。
 仏教における「救済」は「苦しみから救うこと」を意味し、現世では「悟りを得る」だけでなく「死なないこと」も重要になってきます。つまり、命の危険があれば助けてくれる可能性があります。

 女が置かれている状況を考えると、作品の舞台と想定される「室町時代の京都」は、やがて応仁《おうにん》の乱などの戦禍で焼け野原となります。女の家がある下京も例外ではありませんので、身の安全を確保するには事前に遠ざける必要があるわけです。

 このために選ばれたのが、たまたま清水寺を訪れた九州出身の佐伯です。既婚者である上に性格などにも問題がありますが、「都から離れた地に移動させる」という目的には利用できますので、観世音菩薩は女の夢に立って「声を掛けてくる男と親しくなるように」などと告げておき、あらかじめ警戒心を下げておいた――と考えています。
(※根拠はありません)

 なお、佐伯が最終的に成仏できたのは、「女の命を救った」という徳のポイント加算も関係していると思います。


【 主な参考文献 】


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