現代語訳『梅松論』(中先代の乱) ~ はじめに ~

今回から南北朝時代に成立した『梅松論ばいしょうろん』(延宝本)という歴史書/軍記物語の一部を現代語訳でお届けします。
具体的には南北朝時代の初期、建武けんむ二年(一三三五年)に起きた「中先代なかせんだいの乱」に関する箇所の抜粋を訳しています。

乱を起こした北条ほうじょう時行ときゆきが主人公の『逃げ上手の若君』(松井優征 著)ではコミック13巻(第110話)までに該当し、アニメ1期の範囲を超えた内容になりますので、ネタばれが嫌な方は十分ご注意ください。
(「中先代の乱」の経緯や結末をご存じない方にはあまりお勧めしません)

また、この『梅松論』は室町幕府を作った足利尊氏たかうじ直義ただよし兄弟の正当性を主張する歴史書で、足利側から見た比較的あっさりとした内容になっています。読み物(エンタメ)としては先のコミックの原作でもある『太平記』の方がよりドラマチック・ダイナミックに描かれていますので、興味がある方はぜひそちらもご覧下さい。

『梅松論』の作者は不明ですが、一説には足利氏の支流である細川氏が記したものではないかと言われています。ちょうど今回の範囲にも話の流れをぶった切るように細川氏に関する記述が挟み込まれ、足利側に都合の悪い内容が曖昧に表現されていますので、その可能性は十分あり得ると思います。

【 主な参考文献 】
新選日本古典文庫(三)『梅松論・源威集』(矢代和夫・加美宏 校注)、現代思潮新社


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